【仏像の種類:金剛力士(仁王)とは、ご利益・梵字など】あ…うん!息ぴったり2人1組、マッチョな最強の門番登場!


恐いお顔ですけど、なぜか親しみのあるのが金剛力士(こんごうりきし)。お寺参りをすると門のところでよく出会う、あの仁王(におう)さまです。寺の門で立ちはだかり、仏教世界の最前線で諸悪を断ち切る使命を帯びた2人の仏神。寒い日も暑い日も、雨の日も風の日も昼夜を問わず長い長い年月勤め続けています。色が褪せていても、傷みが激しくても、それが自分の身を呈して寺の仏たちを守る彼らの勲章。ちょっと、感動しちゃいます。きっと、これからもボロボロになるまであの門のところで立ち続けるんだろうな。

 

金剛力士(仁王)の主な働き

 

金剛力士(こんごうりきし)は、仁王とも呼ばれ、迫力十分な姿で、そのインパクトは絶大。名前に「天」は付いていませんが、仏教の守護神である天部のメンバーです。寺院の表門などに安置されることの多い像です。サンスクリット名は「ヴァジュラダラ」と言い、「金剛杵(こんごうしょ/仏敵を退散させる武器)を持つもの」という意味。金剛杵は、硬いダイヤモンドでさえ砕くことができるという強い武器で、それを持った金剛力士は、かなり手ごわい門番であることは間違いありません。

 

口を開けた阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像の2体が一対で目を剥き、上半身裸の筋肉を見せつけるようにして構えるのは、それは彼らが寺院内に仏敵が入り込むことを防ぐ守護神だからです。そういう意味では、魔よけの意味がある神社の狛犬と似た役割ということもできます。

仁王像は安置される場所柄、風雨の害を蒙りやすく、中世以前の古像で、良い状態で残っているものはあまり多くはありませんが、それに構わず最前線で「仁王立ち」して身体を張るのが、根っからの戦士・金剛力士です。

阿吽の呼吸

口を開ける「阿形」、口を閉じる「吽形」で一対になる金剛力士。「阿」と「吽」は仏教が生まれたインドの言葉であるサンスクリット語由来です。「阿」は最初の語で”a”と口を開けて発音し、「吽」は最後の語で”hum”と口を閉じて発音することから、宇宙の始まりと終わり、陰と陽、つまり万物の一切を表すのです。

 

いつも対になって諸悪に立ち向かう金剛力士の阿形と吽形は、意志は通い合い、呼吸はぴったりです。無言のままでも意志疎通が出来ていることを「阿吽(あうん)の呼吸」と呼ぶのは、金剛力士が由縁とされています。

 

余談ですが日本語の五十音の順序も、このサンスクリット語が元になってますよ。「あ」で始まり「ん」で終わってるでしょ?

金剛力士(仁王)の見た目

奈良時代までは甲冑を着た武将姿の像も存在しますが、上半身裸で筋肉隆々のたくましい体躯の像容が一般的です。

現存する像では持物として金剛杵をとるもの,金剛杵をとらず五指を開いているものがあります。

金剛力士像の左右は決まっているの?

仁王像つまり金剛力士像は一般的に二体一組で配置されています。仏像としては「阿形」と「吽形」の2体に分れていますが、どちらも仁王さま。通常は、向かって右側に阿形像、向かって左側に吽形像が配置されます。

 

ただし、この左右の配置は絶対ではありません。像の判別には、直接像の口元を確認するのが一番確実です。

金剛力士(におう)の成り立ち

前身は古代インドの神「ヴァジュラダラ」で、「金剛杵を持っているもの」という意味ですが、実は金剛力士と同様に、金剛杵を持つ、執金剛神(しゅうこんごうしん)という仏神が金剛力士の前身と言われます。甲胄に身を固める独尊だった執金剛神が、仏敵の侵入を防ぐにあたり、二体に分れて門の左右に祀られる像、金剛力士となりました。

奈良時代に造像された金剛力士で甲冑を着けたものが堂内に安置されこともあったので、執金剛神と金剛力士が同時に存在していたこともあったようです。

金剛力士は天部の仏神で、天部の仏で須弥壇に上がれるのは、梵天や帝釈天のような最高クラスの仏だけのはずが、もともとは、堂内で直接本尊を守る役目をもっていたことがわかります。

 

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金剛力士の真言と梵字、ご利益

金剛力士を表わす種字と真言は、阿形と吽形でそれぞれ別のものがあります。

阿形の種字がこれです。

」と読みます。

 

阿形の真言は「ナマサマンダバ・サラナン・トラダリセイ・マカロシヤナキャナセサルバダタアギャタネン・クロソワカ」です。

次に、吽形の種字がこれです。

ウン」と読みます。

 

 

吽形の真言は「ナマサマンダバ・サラナン・ケイアビモキャ・マカハラセンダキャナヤキンジラヤ・サマセ・サマセ・マナサンマラ・ソワカ」と言います。

POINT!仁王の真言ってとっても長くて呼びづらいですよね。実際には阿吽の仁王様をまとめて「オン・ウーン・ソワカ」と短くお唱えすることができるので、こちらでもOKです!

さて、金剛力士には仏教守護、身体健全、健脚のご利益があるとされています。

仏法守護のご利益は、あまり私たちの生活に関わりませんが、身体の健康、特に足へのご利益は現世利益そのものです。金剛力士が立つ仁王門などに、わらじが奉納されているのに気付いたことはありませんか? それが「健脚であること」をお願いしていた証しです。スポーツ用品メーカーのアシックスが金剛力士をマラソンや駅伝用ブランドGONAにデザインとして採用していたこともあるんですよ。

金剛力士(仁王)像の主な例

奈良・東大寺南大門/金剛力士阿形・吽形立像【国宝】(鎌倉時代)〈阿形:運慶・快慶作、吽形:定覚・湛慶作〉

 

「奈良の大仏さま」でみんなが良く知る東大寺。その東大寺大仏殿への参道の途中にある高さ25メートルの日本最大規模の山門(国宝)に、おそらく日本で一番有名かつ最大の木彫像、一対の金剛力士像(各像高8.4m)が立ちはだかっています。

上半身をあらわにした2体は、筋骨隆々。カッと両の目を見開いて、睨みをきかす迫力たっぷりの表情です。「寄木造(よせぎづくり)」と分担作業で3000もの木材を組み、約2ヶ月という驚異的スピードで造像された2体です。制作には、運慶・快慶を始め、20人近い仏師が携わったとされています。わずかに残る彩色から、当初は赤い肌に、朱色や緑、青の華やかな裳(下半身の服)だったことがわかっています。

一旦組み上げてから、像を間近に見上げた時に、より迫力を出す微調整が行われ、仁王像の指に樹木の年輪を利用して指紋を表現し、足に浮かび上がる血管まで表わした運慶たちのすさまじい職人芸の結晶。まさに国宝に相応しい2像です。

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奈良・興福寺国宝館/金剛力士阿形・吽形立像【国宝】(鎌倉時代)〈伝・定慶作〉

 

興福寺は藤原鎌足と藤原不比等(ふひと)ゆかりの寺院として、その強大さと長い歴史を証明するように、多くの宝物を現代に伝える寺院です。

こちらの金剛力士像は、屋外の門ではなく、鎌倉時代再興期の西金堂須弥壇上に本尊の脇侍として安置されていました。そのため、像高は阿形像154cm、吽形像153.7cmとサイズはほぼ等身大です。

しかし、筋肉のリアルさや衣文の表現、大ぶりなポーズは迫力満点。その表現から、向かって右に阿形(あぎょう)が、左に吽形(うんぎょう)が安置されていたと推定されます。両像とも檜材の寄木作りで玉眼が入り、阿形像の身体は朱色、吽形像は白色に彩色され、腰裳に文様が表わされていたのがわかります。

吽像の像内に、1288年に両像が大仏師善増らによって修復されたという墨書が発見されました。寺伝では、定慶の作となっています。

千葉・萬満寺仁王門/金剛力士阿形・吽形立像【重文】(鎌倉時代)

 

萬満寺は千葉県松戸市馬橋にある臨済宗大徳寺派の寺院です。こちらの仁王門に重要文化財の仁王像があります。

寺伝では運慶作ですが、よくわかっていません。2体の木造金剛力士立像は、いずれも寄木造りで、筋肉モリモリの阿形像(像高257cm)吽形像(像高240cm)です。

 

こちらの寺院で注目したいのは「仁王さまの股くぐり」と呼ばれる祭礼行事。春季と秋季の大祭と、正月三ヶ日には仁王門が開帳され、なんと金剛力士像の阿形像の股の間をくぐり抜けて健康と厄除けを祈願できるんです!

 

本尊が全国唯一の中気除不動尊(中気とは脳卒中、くも膜下出血など脳の出血による半身不随や手足の麻痺のこと)といわれているため、全国から多くの人が訪れます。それにしても、国の重要文化財の仁王さまの股の下をくぐることができるなんて、めったにない機会です。それほど、こちらの金剛力士像が人々に親しまれているということでしょうね。

あとがき:仁王写真専門家の渡仁さん

仁王写真専門家である渡仁(とにん)さんをご紹介します。

渡仁さんは金剛力士像を愛し全国の仁王像をめぐり続け、
2000組以上(2018年時点)の仁王を撮り続けています。

仁王への情熱で渡仁さんに右に出る人は見たことがありません!

以前渡仁さんにお話を伺った際に
「仁王さんは金網に守られていることが多いので、仁王さん写真は金網との死闘だ」

とお話されていたのが印象的でした。

不定期ではありますが写真展を東京近郊を中心に開催されていらっしゃいますので、ご興味のある方は是非覗いてみてはいかがでしょうか。

渡仁さんのブログでは日本各所の仁王写真を紹介されていますので、是非チェックしてみてください!

着目サンスクリット
仁王写真家 渡仁(とにん)が全国の金剛力士像(仁王像)を巡る仁王行脚のWebサイト。

【書籍紹介】天部の仏像のことをもっと知りたくなった時には…

ここでは今回紹介した天部の仏像以外にもより深く仏像について学ぶことができる書籍・DVDをご紹介いたします。ただどれもわかりやすく書かれている初心者~中級者向けの本ですので、お気軽にお読みいただけるかと思います。

天の仏像のすべて (エイムック)

天部の仏像に特化した書籍というのは、現在普通に販売されているなかでは、ほぼこの1冊くらいしか見当たりません。

如来像のすべて、明王像のすべてなど◯◯のすべてシリーズの天部バージョン。

天の仏像にしぼってカラフルな仏像の写真がたくさん掲載されていて迫力満点! 勉強するだけでなく、写真集のごとく眺めるのもオツな風情。 やはり全巻そろえたいですね。

[関連リンク]◯◯の仏像のすべてシリーズ

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見仏記ガイドブック

ご存知、いとうせいこうさん&みうらじゅんさんの見仏記コンビ。

これまでに出た見仏記を再編集し、ガイドに仕上げた総括的な本です。

見仏記の楽しい内容を閉じ込め、より旅のガイドブックとして使いやすくなりました。 みなさんの見仏のおともにぜひ!

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仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる

天のランクに属する仏像の種類はほんとうにさまざまで最初のころは 仏像に出会ってもなかなかなんの仏像なのか判別がむずかしいところ。

こちらはポケットサイズの仏像本。 私は友人からもらったこの本と上で紹介した見仏記をもって 仏像旅をするようになったのが仏像好きになったきっかけです。

この本をポケットに入れてお堂の中に入っては 「この仏像は忍者のポーズをしてるから大日如来だ!」とか思いながら 仏像の名前を当てたり、見分け方を勉強するようにしていました。

ポケットにしのばせて、これを持っていれば、いつ仏像がやって来ても大丈夫!

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奈良 仏像めぐり (たびカル)

たびかるさんの仏像シリーズの奈良版です。 天の仏像が多い東大寺や興福寺などもバッチリカバーされています!

旅の雑誌らしく仏像を紹介するだけでなく拝観方法や拝観可能時間などもまとめられていて 女性でも親しみやすくポップでかわいい雰囲気。

たびカルさんは京都版も出ているので この奈良の仏像編とあわせていつでも旅に出かけられるよう備えておくと 重宝すると思います!

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