【仏像の種類:吉祥天とは、ご利益・梵字、真言など】仏教版幸福の女神!セクシーな存在の背景には個性的すぎる家庭環境


さあ、とても素敵な女神様の登場です。もともとヒンドゥー教の女神であるラクシュミーが仏教に取り入れられたとされる吉祥天(きっしょうてん/きちじょうてん)。美しいのは当然、だってヒンドゥー教では美と繁栄の女神だったんですから!

吉祥天の主な働き

吉祥とは繁栄・幸運を意味し幸福・美・富を顕わす神とされます。密教では美女の代名詞となって信仰されました。五穀豊穣の神としても崇拝されています。幸せを司る神として大きな存在なんです。

 

 

不空訳の密教経典によると未来には成仏して吉祥吉祥摩尼宝生如来(きちじょうまにほうしょうにょらい)になると説かれています。とてもポテンシャルの高い女神さまなわけですね。

実は、吉祥天には可哀想な一面も。もともと吉祥天は貴族階級の人たちに広く信仰された女神でした。でも、次第に一般民衆に支持されていたもっとカジュアルで強力なライバルの女神さま・弁財天に次第に人気を取られることになっちゃいました。弁財天と混同されることも多くなってきて、いつのまにか七福神の座も奪われてしまったんです。

 

アイドルのグループにも、センターを誰かに取られて、別のグループに移る、なんてこともありますしね。人気が頼りの稼業、ということなのでしょうか。

 

 

吉祥天の家族

吉祥天は、ヒンドゥー教ではヴィシュヌ神の后とされていましたが、仏教においてもヴィシュヌ神が仏教に取り入れられてなったという毘沙門天が夫です。母親は子供を喰らいまくったとされる鬼子母神、父親は水の神、八大竜王の一人・徳叉迦(とくさか)で、妹の黒闇天(こくあんてん)はなんと、災いと不幸を呼ぶ神です。三十三間堂で異色な存在感を示す二十八部衆に属する婆藪仙人(ばすせんにん)というお兄さんもいますよ。

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毘沙門天の脇侍として、吉祥天と一緒に祀られる善膩師童子(ぜんにしどうじ)は毘沙門天との間の5人の息子のうちの一人ですし。なかなか個性的なメンツの揃った家族ですね。

ここでなかなかのインパクとのある吉祥天の妹の黒闇天についての追加インフォーメーションを。黒闇天は醜悪な容貌で、人に災難を与える女神です。密教では閻魔王の后だそうです。なんだか、ものすごい吉祥天との対比ですね。

 

吉祥天の成り立ち

ヒンドゥー教の女神であるラクシュミーが仏教に取り入れられたとされます。ヒンドゥー教ではヴィシュヌ神の妃とされ、また愛神カーマの母と考えられています。帝釈天(インドラ)などと共に早い段階で仏教入りをはたした吉祥天。吉祥天信仰は日本では8世紀に高まりました。吉祥天に懺悔し、天下泰平や五穀豊穣を祈る吉祥悔過(けか)という法会が盛んに営まれたという記録が残っています。奈良・東大寺法華堂などには当時の仏像も現存しています。

 

 

日本に初めてその名を知られたのは奈良時代で、『金光明最勝王経』というお経に名前が出ています。それによれば、吉祥天のお役目は、信者に福を授けること。お経を読めば食事や着るものに困らず、吉祥天像を祀れば家が栄えて金持ちになり、お経を捧げれば五穀豊穣間違いナシ、といいことづくし! でも、姉は豪華な服で気品があって美しいのに、妹はみすぼらしくて、容姿も性格も悪い正反対だそうです。そう、先述した例の黒闇天が妹なんです。でも実は姉妹は表裏一体の存在で、一方だけを招き入れることはできないそうです。人間は貪欲になりすぎるとそれは不幸をもたらします。何事もほどほどにするべきだ、という教えです。

 

 

1000円切手

1975年4月22日に発行された初代1000円切手は吉祥天ファンにとっては本当に「記念」と呼べる切手。その絵柄に選ばれたのが吉祥天立像だからです。モデルとなった吉祥天立像は奈良県にほど近い京都府木津川市の浄瑠璃寺にあります。数ある文化財の中から、この吉祥天が選ばれたのは、厨子に長く保存されていたために、その鮮やかな色彩が残された美しい女性の像だったからでしょう。国宝までをも差し置いて重要文化財のこの吉祥天が選ばれたなんて、さすがのフォトジェニック!

 

現在は1000円切手も代替わりして、この吉祥天の切手は高嶺の花となり、入手しにくくなりました。

吉祥天の真言と梵字

吉祥天を表わす種字はこれです。

シリー」と読みます。

美人の女神さまからご利益に預かりたければ、以下の真言を口にしてみてください。

オン・マカ・シュリエイ・ソワカ」。

財宝琴線、五穀豊穣、商売繁盛、天下泰平、家内安全などの現世利益が得られるのだそうです。

吉祥天の見た目の特徴、見分け方

中国・唐の貴婦人の姿で優雅な衣装を身にまとい、宝冠をかぶって如意宝珠を左手に持ち、右手は与願印と呼ばれる形をしているという像容が一般的です。

如意宝珠の如意とは「意のままに」という意味。如意宝珠はどんな願いでも、意のままに叶えるための道具、と言った意味合いを持ちます。与願印は「どんな願いも聞き入れますよ」という意味を持つ仏像の手の形の一つ。宝珠も与願印も吉祥天独自のものではありませんが、女神様の優しそうな性格が伺えますね。

吉祥天女像の主な例

京都・浄瑠璃寺本堂/吉祥天立像【重文】(鎌倉時代)

 

浄瑠璃寺は地理的には奈良の平城京や東大寺に近い、京都府木津川市にある真言律宗の寺院です。像高90cmの吉祥天像は、本堂の九体阿弥陀の中尊の向かって左側におかれた厨子の中に安置されています。秘仏であり春、秋、正月の年に3度だけ開扉されます。蓮華座の上に立ち、右腕は下げて与願印を示し、左腕は肘を曲げ手のひらを上にして宝珠を捧げるようなポーズ。長く厨子にはいっていた箱入り娘であったせいか、彩色が鮮やかに残っており、真っ白な顔、赤い衣、繊細な装飾品などがよい状態で保存されており、仏像というよりは人形のようです。切れ長の目、小さな赤い口の誰もが認める美人顔。先述の1000円切手に採用された吉祥天です。

奈良・法隆寺金堂/吉祥天立像・毘沙門天立像【国宝】(平安時代)

奈良県生駒郡斑鳩町の法隆寺は聖徳太子ゆかりの寺院として有名ですね。その中の西院伽藍最古の建築である国宝金堂に吉祥天が安置されています。

夫である同じく国宝の毘沙門天と共に、釈迦三尊像の左右に祀られ、どちらの像も美しい彩色がよく残っています。

吉祥天はやはり美人です。左手で宝珠を捧げるところは典型的なポーズ。しかし、右手が何かを言おうとしているかのようで、少し前に出しかけた手が低い位置で止まってしまった感じ。その手指の表情がなんとも優雅です。

鮮やかな色が残った衣が美しく、円形の台座の上に直立しています。

 

旦那さまの毘沙門天は怒りが誇張して表現されておらず、控えめ。衣の美しさもあってこちらも優美さを感じさせる立像です。右手で宝塔を捧げ、左手で戟を持っています。ちょっと丸顔なところが、幼っぽくさえ見える親しみやすい表情です。

この両像は、「吉祥悔過会(きちじょうけかえ)」という五穀豊穣を願う法会においての本尊とするために1078年に造立されたことが記録に残る、大変古い吉祥天・毘沙門天像です。

 

 

山梨・福光園寺/吉祥天坐像および二天像【重文】(鎌倉時代)〈蓮慶〉

山梨県笛吹市にある真言宗の寺院です。ここに全国でも2体しかないと言われる珍しい坐像の吉祥天が祀られています。通常、吉祥天像は立像が多いのですが、こちらの吉祥天は坐像である上に、左右に両脇侍として持国天と多聞天を配した、他に例のない大変珍しい配置をされた像です。

中尊である吉祥天像は玉眼を持ち、おおきな曲げが印象的。堂々として、厚めの肩まわりが男性的に感じさせる造像です。安定感に富み、衣や袖口が華やかなイメージです。

両脇の二天は怒りの表情ですが、誇張はあまり感じられません。吉祥天の像内の銘文により鎌倉時代前期の1231年に仏師蓮慶の作だということがわかりました。

 

吉祥天坐像へ3回願い事を繰り返し唱えると願いが叶う、との言い伝えがあるそうで、多くの女性が子授祈願や安産祈願などでご利益にあやかろうと訪ねてくるそうです。お母さんのように堂々として、しかも二天を引き連れた、頼りがいのある吉祥天です。

【書籍紹介】天部の仏像のことをもっと知りたくなった時には…

ここでは今回紹介した天部の仏像以外にもより深く仏像について学ぶことができる書籍・DVDをご紹介いたします。ただどれもわかりやすく書かれている初心者~中級者向けの本ですので、お気軽にお読みいただけるかと思います。

天の仏像のすべて (エイムック)

天部の仏像に特化した書籍というのは、現在普通に販売されているなかでは、ほぼこの1冊くらいしか見当たりません。

如来像のすべて、明王像のすべてなど◯◯のすべてシリーズの天部バージョン。

天の仏像にしぼってカラフルな仏像の写真がたくさん掲載されていて迫力満点! 勉強するだけでなく、写真集のごとく眺めるのもオツな風情。 やはり全巻そろえたいですね。

[関連リンク]◯◯の仏像のすべてシリーズ

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見仏記ガイドブック

ご存知、いとうせいこうさん&みうらじゅんさんの見仏記コンビ。

これまでに出た見仏記を再編集し、ガイドに仕上げた総括的な本です。

見仏記の楽しい内容を閉じ込め、より旅のガイドブックとして使いやすくなりました。 みなさんの見仏のおともにぜひ!

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仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる

天のランクに属する仏像の種類はほんとうにさまざまで最初のころは 仏像に出会ってもなかなかなんの仏像なのか判別がむずかしいところ。

こちらはポケットサイズの仏像本。 私は友人からもらったこの本と上で紹介した見仏記をもって 仏像旅をするようになったのが仏像好きになったきっかけです。

この本をポケットに入れてお堂の中に入っては 「この仏像は忍者のポーズをしてるから大日如来だ!」とか思いながら 仏像の名前を当てたり、見分け方を勉強するようにしていました。

ポケットにしのばせて、これを持っていれば、いつ仏像がやって来ても大丈夫!

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奈良 仏像めぐり (たびカル)

たびかるさんの仏像シリーズの奈良版です。 天の仏像が多い東大寺や興福寺などもバッチリカバーされています!

旅の雑誌らしく仏像を紹介するだけでなく拝観方法や拝観可能時間などもまとめられていて 女性でも親しみやすくポップでかわいい雰囲気。

たびカルさんは京都版も出ているので この奈良の仏像編とあわせていつでも旅に出かけられるよう備えておくと 重宝すると思います!

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