【仏像の種類:虚空蔵菩薩とは】知恵の四次元ポケット!空海の生みの親、虚空蔵菩薩の梵字真言など


無限に広がる蔵の中から人の願いを叶えるために知恵や知識、慈悲を取り出して与えてくださる優しい菩薩さま。「えー、それって、まるでドラ○もんじゃーん!」 ということで、今回は仏教界のネコ型ロボット、もとい、いろんなアイテムで助けてくれるお助けマン、とでも呼ぶべき虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)のご登場でございます!

虚空蔵菩薩の主な働き

虚空蔵とは宇宙のような無限の知恵と慈悲が収まっている蔵(貯蔵庫)のこと。虚空蔵菩薩は、人々の願いを叶えるために、それらを蔵から取り出して与えてくれる、とっても優しい菩薩さま。

奈良時代から人気があったんです。平安時代に空海によって中国から密教がもたらされる前から、無限の記憶力を得て、仏の知恵を体得できるという超スゴイ「虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)」の本尊でした。

 

空海と虚空蔵菩薩との出会い

 

真言宗の開祖・空海だって若い頃、徳島県室戸岬の御厨人窟(みくろど)と呼ばれる洞窟で虚空蔵求聞持法の修行をやりました。するとある日、突然口の中に光りが飛び込み、その瞬間に「空」と「海」が輝いて見え、求聞持法を会得して無限の智恵を手に入れたそうです。空海の名もそこから取りました。そう、空海が密教を開眼するようになるきっかけはこの虚空蔵菩薩!

 

 

その後の空海の活躍を考えれば、それだけでも「虚空蔵菩薩、Good Job!」の声が仏教界から聞こえてきそうです。

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求聞持法を読んでみる!

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虚空蔵菩薩が5人に分身!五大虚空蔵菩薩

求聞持法は虚空蔵菩薩の本尊1体に対する修法です。実はこれ以外に5体の虚空蔵菩薩を1グループとして祀る五大虚空蔵菩薩があります。虚空蔵菩薩の5つの智恵を5体の菩薩像で表したもので、五智如来の変化身(へんげしん)とも。息災・増益などの祈願の対象となります。五大虚空蔵菩薩にもそれぞれ個性があります。名称、立ち位置、身体の色は次の通り。

法界虚空蔵(中央、白)

金剛虚空蔵(東方、黄)

蓮華虚空蔵(西方、赤)

宝光虚空蔵(南方、青)

業用(ごうよう)虚空蔵(北方、黒紫)

これを見ると、やはり子供が大好きなレンジャー戦隊というのは、この五大虚空蔵菩薩をヒントに生まれたんじゃないかと考えずにはいられません。

有名な五大虚空蔵菩薩

京都・神護寺 五大虚空蔵菩薩坐像

京都・東寺 観智院/五大虚空蔵菩薩

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虚空蔵菩薩の見た目

標準的な像容は、1つの顔に2本の腕。如来とは違って菩薩らしく、アクセサリーや天衣(てんね)を身に付け、宝冠を戴きます。

そして右手に剣、左手に如意宝珠を持っているのが一般的。求聞持法の本尊となる虚空蔵は半跏像で、如意宝珠をのせた蓮華を持ち、願うものを与えるという意味の与願印を示します。

虚空蔵菩薩の成り立ち

「虚空蔵」とは「虚空の母胎」という意味のアーカーシャガルバの漢訳です。

もともと、「求聞持法(ぐもんじほう)」という行法(ぎょうぼう)の本尊だったというのは先述の通り。

 

その修行を行った空海はのちに、仏教を論理的に説いた『三教指帰(さんごうしいき)』の中で、この真言を百万回唱えれば大変な暗記力を得られると著しました。いろんな経典を理解し、記憶し、忘れることがない上に、あらゆる財宝を得られる功徳、所願成就の功徳まであるという盛りだくさん! 虚空蔵菩薩が蔵の中から出してくるアイテムは魅力的なものばかりです。空海が虚空蔵菩薩のこれらの功徳を整理して人々に説いたのです。

 

 

虚空蔵菩薩とはそもそも、宇宙を意味する「虚空」と、恵みを与える宝を持つ意味の「蔵」を合わせた名前です。

 

これに対応するのが、大地を表す「」と「」、つまり地蔵菩薩。両菩薩はペアとなっていました。しかし、地蔵菩薩の役割が発展し、独自の信仰に支えられるようになり、今ではペアで祀られることはあまりなくなったようです。

虚空蔵菩薩の真言と梵字・ご利益

 

この文字が虚空蔵菩薩を表わす種字です。「タラーク」と読みます。

その真言は「オン・バサラ・アラタンノウ・オン・タラク・ソワカ」。

虚空蔵菩薩のご利益

知恵と記憶力を謳う菩薩だけあって、ご利益も成績向上、記憶力増進、頭脳明晰、商売繁盛、技芸向上などがあります。

また、守り本尊として丑・寅年に生まれた人々の開運、厄除け、祈願成就を助けるといわれています。

虚空蔵菩薩のご利益アイテム

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虚空蔵菩薩の主な作例

京都府・神護寺多宝塔/五大虚空蔵菩薩坐像【国宝】(平安時代)

 

神護寺は京都市右京区高雄にある寺院で、本尊は薬師如来、開基は和気清麻呂です。

この寺には、神護寺の前身である高雄山寺だったころ、812年に空海が灌頂の儀式を行った時の受者の名簿『灌頂暦名』が残っています。空海の自筆によるもので、ふだんの筆跡を伝える書道史上重要な作品を伝える空海ゆかりの寺でもあります。

ここにあるのが、国宝指定されている唯一の作例である、五大虚空蔵菩薩像5躯です。5体とも像高90cmあまり。ほぼ同形の坐像で、手の形や持物、そして身体の色が違います。

現在は拝観しやすいようにとの配慮のためか、横一直線に安置される5躯ですが、もとは中尊を4体が囲む五大虚空蔵菩薩像のレイアウトに沿って中央と東西南北に配置されていました。

いずれの像も、両腕のひじから先に別材を矧ぎ付けるほかは一材から彫り出した一木造りです。彩色は九世紀末に塗りなおした記録があり、当初のものではありません。木製の宝冠、瓔珞、臂釧などの装身具も後世のもの。光背、台座も今はありません。

 

奈良県・額安寺(文化庁所蔵)/乾漆虚空蔵菩薩半跏像【重文】(奈良時代)

額安寺は奈良県大和郡山市額田部寺町(ぬかたべてらまち)にある真言律宗の寺院です。

こちらの根本本尊は、現存する日本最古の虚空蔵菩薩。757年頃の奈良時代、天平末期の制作と推定されています。

天平時代作の木心乾漆像です。全体がすらりとして、背筋がスッと伸びたかんじ。上半身に比べて脚部が小さめなので、ひょろ長い印象があります。左足を踏み下ろして坐る形です。穏やかな表情の顔はやや面長で、唇が紅くぽってり。すらりとしたカーブの眉で、感情を伴わない瞳が見えます。

上半身のアクセサリー類は細かく美しいもので、複雑に交差する条帛(じょうはく)の流れも素晴らしいです。足部分の衣紋や蓮弁、円光背や身体にも美しい彩色が残っています。これらの彩色は、鎌倉時代に補修したということが台座銘からわかっていますが、800年前の色が美しく残っているのは貴重です。

 

奈良県・東大寺大仏殿/虚空蔵菩薩坐像【重文】(江戸時代)〈椿井賢慶一門、山本順慶一門ら〉

現在の東大寺大仏殿は創建当初から比べて規模が縮小されたとはいえ、世界最大級の木造建築物であり、国宝に指定されています。

 

こちらの虚空蔵菩薩は、東大寺の本尊・盧舎那仏の脇侍として如意輪観音とペアになって、大仏に向かって左に安置されています。中尊が大仏であるため、比べると小さく見える虚空蔵菩薩も、実際は7.1mの巨大な像。大仏が銅造であるのに対し虚空蔵菩薩坐像は木造で、製作者は山本順慶一門と椿井賢慶一門とされています。江戸時代の1752年に完成しました。

 

虚空蔵菩薩の手は右手を膝上に置き与願印、左手を上げる施無畏(せむい)印を表わしています。ふくよかなお顔は、対になっている如意輪観音坐像とそっくり。台座や裳裾の彫刻が見事な出来映えです。

 

巨像を破綻なくまとめたよい作品で、江戸時代の代表的な仏教彫刻です。

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