【仏像の種類:降三世明王とは】人を踏みつけてる?!世界の神々も降伏させる超怖い先生!降三世明王のご利益・梵字、真言など


ひどいやつだなー、倒れる2人を思い切り踏んづけるのは何者? と思えば、明王さまではないですか! 諦めているのか、息絶えてしまっているのか、無抵抗な2人の胸や腹の辺りに遠慮の「え」の字もなく、腰を据えて立っています。これこそ五大明王の中の東方担当、仏教じゃない別宗教の神様を成敗するという“宗教異種格闘技戦”に勝利した降三世明王(ごうさんぜみょうおう)さま。一体どんな事情が!?

降三世明王の主な働き

降三世明王は、密教特有の尊格である明王のひとつ。五大明王の一尊としてメンバーになっている東方担当のガードマンです。

 

「降三世」というのはサンスクリット語でトライローキヤ・ヴィジャヤといい、「三界の主(シヴァ)を降伏させた」という意味です。過去・現在・未来の世界にはびこる貪(とん/むさぼり),瞋(じん/腹を立てる気持ち),痴(ち/愚かな気持ち)の三毒と呼ばれる煩悩を下すのがこの明王の職務です。阿閃(あしゅく)如来、大日如来の化身ともいわれています。

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降三世明王の見た目

背後には炎の形をした光背を持ち、手には金剛杵(こんごうしょ)、金剛戟(こんごうげき)、矢、弓、刀、索(さく/縄)などの様々な武器を持っています。怒りの表情をした四方に向ける4つの顔と8本の手が一般的な像容です。

降三世明王が踏みつけているのは、一体誰?なぜ?

さて、ここでクイズです! 降三世明王の像の足元を見ると、蓮華や岩場に立っているのではなく、誰かを踏みつけています。それは誰でしょう!? ここまでの話しの中でヒントがありましたね?

そう、降三世明王が思いっきり踏んづけているのは、ヒンドゥー教のシヴァ神(大自在天)とその妻ウマ-(鳥摩)なんです。

 

 

シヴァとその妻ウマーは自分たちこそ世界の支配者であるとして仏教に従おうとしませんでした。そこで、大日如来(阿閃如来だとも言われています)が恐ろしい忿怒身に変身して降三世明王となり、二人を力で降伏させたのです。この踏みつけ方が、結構容赦ないところが、この降三世明王の強さ、怖さを物語っています。

 

他宗教では偉大な神であるはずの存在をためらいなく踏みつけるという異色の構図。なかなか思い切ってますよね。二人を踏みつけて立っているという最大の特徴に気づけば、まず降三世明王を見落とすことはありませんね。

降三世明王オリジナルの手のかまえ「降三世明王印」

降三世明王にはまだ特徴があります。それは胸の前で結んでいる印相。降三世印と呼ばれる印ですが、胸の前で2手の小指を絡ませて交差させ、人差し指を立てるこの印を用いるのは降三世明王だけです。

降三世明王の成り立ち

大日如来が説法をしていたとき、ヒンドゥー教のシヴァ神(大自在天)とその妃・ウマー(鳥摩)が仏教の教えに従わず欲望にとらわれていたため、大日如来はヒンドゥー教世界を救うために降三世明王を降臨させて倒し、仏教へと改宗させたといわれています。

 

確かに、その後シヴァ(大自在天)やその化身であるマハーカーラ(大黒天)は明王よりも下部である天部に所属していますから、降三世明王のほうが格上になっていますよね。しばしば仏教はヒンドゥー教の神を取り入れていますが、異教とはいえシヴァという最高神を倒すという、ものすごいデビューを果たした降三世明王なのです。

 

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降三世明王の真言と梵字、ご利益

降三世明王を表わす種字です。

ウン」と読みます。

真言は「オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ」となります。

煩悩除去、怒りを抑える、悪魔退散のご利益があるとされています。

降三世明王を自分のそばに!

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降三世明王の主な例

京都・東寺講堂/降三世明王立像【国宝】(平安時代)

 

794年の平安京遷都とともに創建された東寺は、それから1200年後の1994年に世界遺産として登録された寺院です。

その東寺を嵯峨天皇から託された弘法大師空海が、唐で学んだ密教を伝え広めるために講堂を建立しました。そこの立体曼荼羅に如来、菩薩、四天王などと共に五大明王も祀られており、メンバーとして降三世明王も配されています。

四面八臂(しめんはっぴ:顔が4面、腕が8本)で、 正面の顔には眉間にも目があり三目となっています。

四面とも眼を見開いてつり上がり、牙をむき出す顔は、炎のように逆立つ焔髪(えんぱつ)と共に、怒りを表しています。左右の第一手で独特の降三世印(小指を絡めて腕を交差させる)を結び、第二の右手は金剛杵、左手は金剛戟を持ち、第三の右手は矢、左手は弓、 第四の右手は刀、左手は索を持っています。

左足下にヒンドゥー教の最高神でもあるシヴァと、右足下にその妃であるウマーを踏む、という典型的な降三世明王像。

典型的、と現代の私たちは言いますが、降三世明王をはじめとする立体曼荼羅の仏像製作を空海から依頼された仏師たちは、見たことのない仏像を初めて作るために戸惑い、試行錯誤を繰り返したに違いありません。仏像が完成して、開眼供養が行われたのは空海が亡くなった4年後でした。

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大阪・金剛寺金堂/降三世明王坐像【国宝】(鎌倉時代)〈行快作〉

金剛寺(こんごうじ)は大阪府河内長野市にある真言宗御室派の大本山です。高野山が女人禁制だったのに対して、金剛寺は女性も参詣ができたため、「女人高野」とも呼ばれました。

 

こちらに、密教の尊勝曼荼羅〔そんしょうまんだら〕を、立体表現したという三尊像があります。大日如来、不動明王、降三世明王の珍しい三尊形式です。珍しいのはそれだけではありません。二臂で髪を高く結い上げ宝冠を被り、しかも坐像であること。坐像ですから、シヴァやウマーを踏みつけていません。そして、独特の印も結んでいないのです。

青黒い躯体、火焔光背の赤、装飾品の金色、歯の白など鮮やかな色使い、ギョロリとした目と表情に圧倒されそうです。

これら三尊像が京都と奈良の国立博物館で修理された際、不動明王坐像から出てきた墨書で、快慶の高弟、行快(ぎょうかい)の作品であることが判明しました。

尊勝曼荼羅の世界感をそのまま三尊の華やかな像に託した貴重な文化遺産です。

 

福井・明通寺本堂/降三世明王立像【重文】(平安時代)

明通寺は福井県小浜市門前にある真言宗御室派の寺院です。京都の清水寺を創建した坂上田村麻呂が、806年に創建したと伝えられています。

本堂の本尊薬師如来の脇侍として向かって右側に降三世明王、左に深沙大将(じんじゃだいしょう)が祀られていますが、本来の脇侍ではありません。

こちらの降三世明王像は4つの顔と8本の腕をもち、左足でシヴァを、右足でその妃であるウマーを踏みつけるという、地方寺においても、仏教の規範に従い忠実に再現された降三世明王の良い例です。逆立った頭髪、大きく見開いた目、牙の見える口、胸の前の降三世印と弓矢や剣などの持物も揃っています。高さ252.4cmの像はヒノキの一木造。

木の材質感がそのまま感じられるからか、憤怒の表情の明王ではありますが、どこかまろやかで優しげな印象のある明王さまです。

 

【書籍紹介】明王のことをもっと知りたくなった時には…

ここでは今回紹介した明王以外にもより深く仏像について学ぶことができる書籍・DVDをご紹介いたします。どれもわかりやすく書かれている初心者~中級者向けの本ですので、お気軽にお読みいただけるかと思います。

読むだけで不動明王から力をもらえる本

「あなたを見捨てません、どんな時も味方でいてくれます。」という不動明王を具体的に、拝み方の流れやお経なども紹介されていて信仰する時の入門書として安心して読める内容になっています。

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明王像のすべて (エイムック 2768)

その名の通り様々な不動明王紹介して不動明王の知識が網羅的に理解できる本です。

写真もカラーのものが多くて読みやすく、たのしく不動明王が学べる本です。

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近畿三十六不動尊巡礼

大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県からなる近畿地方の不動明王霊場である近畿三十六不動尊巡礼のガイドブック。

不動明王のことを知って、ぜひ巡ってみたいと思った方はぜひこれを持って不動霊場を巡ってみましょう!

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