【仏像の種類:烏枢沙摩明王とは、ご利益・梵字、真言など】トイレの神様?!仏様?!汚いことが大嫌い!不浄を燃やし尽くす聖なる炎


「はあ。ウスサマ? どちらサマ?」と言いたくなるような、ちょっと耳慣れない明王さまが烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)。この世の不浄を撲滅するために立ち上がった仏さまです。

このきれい好きの明王さまは実は私たちの近くにいるんですよ。ピンときませんか? え、どこどこ? とキョロキョロしているあなた。気付いてあげて、あなたの家のトイレの神さまに!!

 

烏枢沙摩明王の主な働き

烏枢沙摩明王は、人間界と仏の世界を隔てる天界の「火生三昧」(かしょうざんまい)と呼ばれる炎の世界に住んでいます。全ての不浄を焼き払い浄化させる火神です。人間界の煩悩が仏の世界へ波及しないよう、聖なる炎によって不浄、つまり煩悩や欲望を焼き尽くします。そして、慈悲の心を怒りのパワーに変えて、人々を救い、目覚めさせようとする明王なんです。天台宗に伝承される密教(台密)では、金剛夜叉明王の代わりに明王の中心メンバーである五大明王の一尊に数えられるという、重要な存在でもあります。

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この明王には本来の働きに加え、母親の母胎にいる赤ちゃんを男の子にさせるという力があるということで、男児を求める戦国武将にも広く信仰されました。

 

烏枢沙摩明王はトイレの神さま!?

世の中の汚いものを全て焼き尽くす火神ということから、きれい好きの明王さま、トイレの神さま、ということになっちゃったみたいですね。

まじめなハナシ、便所が古くから怨霊の通り道だと考えられていたこと、実際問題として、伝染病などの感染が拡大しがちな場所であったこともあって、人々はトイレを清めるための存在を必要としていたのでしょう。

 

日本には平安時代に伝えられ、その不浄を除くという力を借りるために特に密教や禅宗などの寺院のトイレ(東司/とうす)などに烏枢沙摩明王を祀ったということです。今でも烏枢沙摩明王の名や姿を描いたお札を、古い商家などのトイレで見かけることがあります。

 

私たちに身近なところでは、何年か前に流行った歌に「トイレの神様」というのがありましたね。あの歌の中では女神さまでだったんですが、トイレをぴっかぴかに磨いたら金運が良くなる、など運気の上昇を信じて実践している方たちも沢山いらっしゃるみたいですよ。

烏枢沙摩明王の見た目

一般的には1つの面に3つの目、手が4本でそれぞれに宝剣、羂索、三鈷杵、棒を持つ1面4臂で全身火炎に包まれている姿です。髪の毛を逆立てた焔髪(えんぱつ)で、上部に蛇が取り巻いているものが多く、タヌキのような蜜目(みつもく)という黒目が小さな目をしているのが特徴的です。

 

主に明王が左足を上げて片足で立った姿であることが多いですが、蓮華の台に半跏趺坐(はんかふざ/どちらか一方の足を反対の太ももの上にのせる坐り方)で座る姿も知られます。

しかし、実際の彫像や絵巻などに残る姿は腕が2本だったり、三面八臂だったりと、他の明王に比べて表現にばらつきがあります。また、持ち物も決まっていません。これは、この明王が主に民間に人気で、盛んに信仰されてきたことを表わしているんです。

烏枢沙摩明王の足元にいる動物は何者!?

烏枢沙摩明王の足元には何やら動物のようなものがいます。

合掌し、正座をしていたり、烏枢沙摩明王に踏みつけられたりしているのは、毘那夜迦(びなやきゃ)という頭が象で身体が人の姿をした鬼神。古代インドでは疫病をもたらすガネーシャと呼ばれていました。

 

毘那夜迦とよく似た役割で「猪頭天(いとうてん)」という人の身体で頭がイノシシの場合もあります。

どちらも態度の悪い鬼神を烏枢沙摩明王が調伏している様子が表現されたものです。

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烏枢沙摩明王の成り立ち

 

烏枢沙摩明王は、インドでウッチュシュマと呼ばれ、それを音写したものです。ウッチュシュマとは、ぱちぱち燃えるというような意味。それを意訳して「火頭金剛、不浄金剛、穢跡金剛(えせきこんごう)」ともいわれます。「金剛」とはダイヤモンドの意味。あらゆる不浄をダイヤモンドのようなキラキラな清浄に転じる力があると信仰されたのでした。

 

火で穢れを焼き尽くすという烏枢沙摩明王の考え方は、古代インド神話の火神・アグニが仏教に取り入れられたものです。インド神話では火の神アグニ、仏教では烏枢沙摩明王として信仰されたわけです。

烏枢沙摩明王の梵字、真言とご利益

 

そんな烏枢沙摩明王を表わす種字はこちら。

ウン」と読みます。

 

真言は「オン・シュリマリママリ・マリシュシュリ・ソワカ」。

不浄を除き、金運が上がるご利益があるということです。

真言を唱えながらトイレ掃除をして金運アップを呼び込もうとしている人も結構いるみたいですよ。

 

トイレに烏枢沙摩明王の札を貼ろう

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烏枢沙摩明王の主な例

静岡県・可睡斎東司/烏枢沙摩明王立像【無指定】(1937年)〈高村晴雲作〉

 

可睡斎は静岡県袋井市にある曹洞宗の寺院です。ここの東司(とうす/トイレ)に祀られている烏枢沙摩明王は日本最大級の像です。

この寺のお手洗いは、なんと戦前より水洗トイレで、当時の建築の粋を極めた大変美しい見事なもの。一瞬トイレであることを忘れてしまいそうです。広々としたトイレエリアの中央部に祀られている烏枢沙摩明王は、高村晴雲の一大傑作。本体は172cmで、台座まで含めると約3mに及ぶ大きな像です。一面四臂の像で、燃えるように逆立てた焔髪(えんぱつ)、蜜目と呼ばれる狸のような目をしているところは典型的な烏枢沙摩明王です。右足元で合掌している毘那夜迦がおり、左足で踏まれているのも毘那夜迦です。

トイレという場所、そして美しい建築と彫刻ということもあって大変インパクトのある烏枢沙摩明王です。

 

富山県・瑞龍寺(ずいりゅうじ)法堂/烏枢沙摩明王立像【県指定】(鎌倉~南北朝時代)

瑞龍寺は、富山県高岡市にある曹洞宗の仏教寺院で、本尊は釈迦如来です。加賀2代藩主前田利長公の菩提を弔うため建立された寺院です。

仏像リンクでも以前、訪問しました。

烏瑟沙摩明王は前田利長の位牌がある法堂に祀られています。トイレの神さまとしても知られる烏瑟沙摩明王は、禅宗寺院において禅宗寺院の東司(便所)に祀られることが多かったといいますが、実は江戸時代には瑞龍寺でも同様だったそうです。

とすれば、像高117cmのこの像はかなり大きなトイレの神さまだったんじゃないでしょうか。

その姿は右手を大きく挙げて矛を持ち、右足一本で岩の上に立っています。そして左足をあげて、それを左手で掴む、というおもしろいポーズですが、絶妙なバランスが秀逸です。顔は斜め左下を見ているのですが、その視線の先には後ろ手に縛り上げられたイノシシの頭と人間の身体を持つ「猪頭天(いとうてん)」が明王の挙げた左足に踏みつけられそうになっています。これは釈迦の説法を妨げようとした悪者なんだそうです。

※瑞龍寺の烏枢沙摩明王はGoogleマップでも拝観することができます!

 

東京都・海雲寺烏枢沙摩明王堂/烏枢沙摩明王立像

東京都品川区にある曹洞宗の品川千躰荒神祭りが有名な寺院です。

千躰荒神とは、「かまど」の神さまと言われ、台所で一番大切な火と水を守ってくださる神さま。そんな台所の神さまが祀られているお寺に、こじんまりした烏枢沙摩明王堂があります。

そこに祀られているのがトイレの神さま・烏枢沙摩明王。

小ぶりながら左手を振り上げ、右手で左足をつかみ、右足一本の絶妙なバランスで岩場に立っているお姿は、小さくても不浄を焼き尽くすという勢いを感じさせる動きのある像です。

台所の神さまとトイレの神さま。どちらも私たちの暮らしには欠かせない庶民の味方が一つのお寺に集まったというわけです。ちなみに、こちらのお寺ではトイレに祀る烏枢沙摩明王のお札を頂くことができます。

【書籍紹介】明王のことをもっと知りたくなった時には…

ここでは今回紹介した明王以外にもより深く仏像について学ぶことができる書籍・DVDをご紹介いたします。どれもわかりやすく書かれている初心者~中級者向けの本ですので、お気軽にお読みいただけるかと思います。

読むだけで不動明王から力をもらえる本

「あなたを見捨てません、どんな時も味方でいてくれます。」という不動明王を具体的に、拝み方の流れやお経なども紹介されていて信仰する時の入門書として安心して読める内容になっています。

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明王像のすべて (エイムック 2768)

その名の通り様々な不動明王紹介して不動明王の知識が網羅的に理解できる本です。

写真もカラーのものが多くて読みやすく、たのしく不動明王が学べる本です。

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近畿三十六不動尊巡礼

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