仏像の種類:天(てん) PR

【仏像の種類:歓喜天とは?】象顔の真実|真言、お経を完全解説!

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ついにきちゃいました、歓喜天(かんぎてん)の世界。仏教界には千手観音、十一面観音など、見た目にインパクトのある仏さまはいらっしゃいますよ。でも、この歓喜天のフリーダムさはなに? 一体この仏像にお祈りしていいの? 言っちゃなんですが、顔が象ですし。こっち見てないし。抱き合って二人の世界に入ってますよ。しかも、こんな強烈な姿の仏さまなのに、周囲に「見た」という人がまずいない、という不思議。

どうやら、ほとんどが秘仏になっちゃっているというこの仏さま。ならばそのヒミツ、ぜひ知りたいっ! でしょ?

歓喜天の主な働き・意味

頭は象、身体は人間の姿をした仏法守護神。もとインド神話の魔王で、のち仏教にとり入れられました。「聖天(しょうでん)さま」と呼ばれることも。

あらゆる障害や困難を取り除き、福徳をもたらす強力な天部の仏です。欲望を抑えきれない衆生がいるなら、まずは欲望を成就させてあげましょう、そうして落ち着いたあとで、その静まった心を仏法へと向かわせなさい、という修法の本尊となる仏です。

 

困難を取り除いてくれることから、何かを断つ祈願を成就させるほか、夫婦和合や、子授けの神様としても有名です。

歓喜天の祀り方

聖天法といういくつか決まった祀り方がありますが、最も有名なものは、浴油供(よくゆく)です。

まず、歓喜天の像を用意し、月が満月に近づいている期間に、清潔な室内に聖天壇と呼ばれる円壇を作ります。一升のゴマ油を清浄な銅の器に入れ、真言を108回唱えます。そしてその油をあたためて像を浸し、祭壇に安置するのです。このために歓喜天の象は15cmから20cmほどの大きさの金属製であることが多いです。

 

さらに清潔な銅のひしゃくでその油を汲み上げ、像の頭に108回注ぎます。これを1日に7回行い、7日続ければ願いは成就するそうです。これらは非公開で行うのが基本です。

【動画】浴油供の様子

歓喜天に捧げる、大根と巾着の意味とは?

歓喜天には、お菓子や大根をお供えします。

大根の白色は息災を意味し、食べると体内の毒や煩悩を消す作用があります。大根は聖天様の好物です。「大根を絶ちますから」と言って祈願すると、聖天さまが同情して早く願いを叶えてくださる、という説も。なお、二又の大根を供えます。大根は性器を表現するとも言われ、歓喜天の由来を知れば、ははーん・・・納得です。

また、歓喜団という果物、ナッツ、スパイスなどを練って作ったお菓子も供えます。形は単体の歓喜天(男天)が砂金を入れたのと同じ巾着型。巾着袋は、歓喜天から受けるご利益が大きいことを示しているんです。

 

実は怖い歓喜天、恐ろしい祟りがある?

歓喜天は、賞罰ともに凄まじい神です。他の神仏では絶対無理な無茶な願い事もかなえてくれる代わりに、祈祷をする者は厳しいルールを守らないとだめなのです。

 

祈祷をするなら、清浄を好む歓喜天のために身体を清潔にしましょう。お経を一字でも間違えたり、注ぐ油が適温でなかったりすると、願い事が叶わないだけでなく、容赦ない祟りが待っています。勤行もサボっちゃダメ!

お寺の住職などは、歓喜天が祀られているお堂の側を通る時、直視せず顔をそむけて通るほどコワイ存在なんです。

しかし、きちんと祈祷をすれば、ご利益はバッチリです。商売繁盛、金運向上、男女和合、勝負事の勝利など何でもござれ。金持ちになりたければ、7代のちの子孫の福徳をいっきに集め、大金持ちになることも夢ではなく、敵を呪い殺すことさえ可能だとか。

歓喜天の見た目

単身像は二,四,六,八,十二臂の場合があり、刀剣,棒,索などを持ちます。

しかし日本では象頭人身の二臂像が抱擁する男神と女神の双身像が一般的。

互いに相手の右肩に顔をのせて、立ったまま抱擁している形です。二天ともよく似ていますが、女天は冠をかぶり、ブレスレットとアンクレットをしています。そして両足とも男天の足先を踏んでいます。男天は冠がなく、赤色の袈裟をかけ、両天ともに裙(くん/巻きスカートのようなもの)を着けています。男天が象で、女天がイノシシの場合もあります。

また、歓喜天の彫像は、円筒形の厨子に安置され、浴油供のために金属製の小さめの像が多いです。

日本仏教には珍しく、男天・女天が抱擁し合う性的な表現に繋がるため、双身歓喜天像は秘仏とされて一般には公開されないのがほとんどです。なるほどねー。

歓喜天の成り立ち

歓喜天、ガネーシャは、もとはインド神話の神でヒンドゥー教に起源を持ちます。

ヒンドゥー教の最高神であるシヴァが父、パールヴァティーが母です。古代インドでは、障碍(しょうがい)を司る神だったのですが、ヒンドゥー教から仏教に取り入れられる際に、仏教に帰依して天部に所属。韋駄天の兄弟となって魔障を取り除く神様となりました。

 

歓喜天は、ふたりでひとつの神様ですが、本当の神仏は、十一面観音の化身である象頭の女神です。もう一方は神ではなくヴィナーヤカ、むしろ魔物でした。調伏に来た十一面観音の化身のことが好きになってしまったヴィナーヤカ。そこで十一面観音は、仏法の信仰と引き換えに、ヴィナーヤカの欲望を鎮めること申し出ます。

 

そして魔物は十一面観音との抱擁で自らの欲望を堪能し、仏法のすばらしさに感じ入って仏教に帰依したのです。双身の像を歓喜天と称するようになったのは、その様子を表わしているのです。日本では江戸時代にこの大聖歓喜天の信仰が流行し、いわゆる「聖天さん」として民衆に親しまれるようになりました。

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ゆるいガネーシャ誕生秘話
作者:ゼリびんさん

歓喜天の真言と梵字、ご利益

歓喜天を表わす種字はこれです。

ギャク」と読みます。

真言は「オン・キリク・ギャク・ウン・ソワカ」。

夫婦和合や安産、病魔の難から逃れられるとして、また福徳神として信仰され、特に商家に深く信仰されています。

歓喜天の主な例

神奈川・鎌倉国宝館(青梅聖天社)/歓喜天立像

鎌倉国宝館は、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮境内の東側にある市立博物館です。鎌倉市域、近隣の社寺に伝来するさまざまな文化財が寄託され、保管・展示されています。

こちらに鶴岡八幡宮の西隣にある青梅聖天社の本尊である双身の歓喜天が保管されています。歓喜天像としては比較的古く大型です

象頭人身の男神と女神がお互いに両腕を相手の腰部分に回して向かい合い、顔を見つめあう姿に造られた珍しい像です。夫婦和合のご利益があると言われる歓喜天ですが、こちらの像は、峠を往来する人々の安全を願ってのことであるとも言われています。

愛知・荒子観音寺荒子観音堂/歓喜天立像〈円空作〉

荒子観音(あらこかんのん)寺は、愛知県名古屋市中川区荒子町にある天台宗の寺院で、「荒子の観音さん」としても親しまれ、またおびただしい円空作の仏像が祀られていることでも知られています。その中に秘仏の歓喜天像があります。

男女の象頭人身の神が抱擁している像です。象頭といいますが、むしろバクのような形の頭部に見えてしまいます。頭を少し高くしている方に頭飾りのようなものが見えるので、そちらが十一面観音の化身である女神でしょう。造型が抽象化しているせいか、この像からは他の歓喜天像のような男女が抱き合う生々しさよりも、むしろ微笑ましく、優しく、美しい像になっています。

岩手・成島毘沙門堂/伝吉祥天立像(平安時代)

岩手県花巻市東和町にある成島毘沙門堂は、坂上田村麻呂もしくは円仁の開基と伝えられていますが、創建の経緯ははっきりしていません。

そして、ここに祀られているのがやはり謎を持つ、伝・吉祥天立像です。

伝承では吉祥天とされていますが、本来はどのような像としてつくられたのか謎なんです。その理由は、このような姿の像が日本全国でも唯一この像だけだからです。

 

頭の上に透かし彫りの二頭の象の冠をいただいていることから、頭が象の神さま歓喜天の可能性があるのです。でも、吉祥天もインドではラクシュミーと呼ばれ、二頭の象に水をかけられる姿で造像される場合もあるので、伝承通り吉祥天かもしれません。丸顔で目が細く、鼻、口、あごが小さめで優しい表情が女性的ではありますが、肩幅は広く、腰回りも太く、重量感があり、凛々しい若者のようにも見えますよ。

神奈川・宝戒寺歓喜天堂/歓喜天立像【重文】(鎌倉時代)

宝戒寺は、神奈川県鎌倉市小町にある天台宗の寺院です。萩(ハギ)の名所で、「萩の寺」とも呼ばれています。

この寺の歓喜天堂に、象頭人身の2神が抱擁する形の像が秘仏として厨子の中に祀られています。厨子の右側には歓喜天を功徳によって導いた十一面観音菩薩立像も祀られています。

歓喜天像は一般に小像が多いのですが、こちらの像は像高155cmの大作。日本における歓喜天像の代表作です。戦後に米軍が強制的に開けたことを除けば、秘仏として公開されたことがありません。川端康成の妻は自ら聖天信者を名乗り、夫のノーベル賞受賞前に足しげく参詣していたそうです。

【書籍紹介】天部の仏像のことをもっと知りたくなった時には…

ここでは今回紹介した天部の仏像以外にもより深く仏像について学ぶことができる書籍・DVDをご紹介いたします。ただどれもわかりやすく書かれている初心者~中級者向けの本ですので、お気軽にお読みいただけるかと思います。

天の仏像のすべて (エイムック)

天部の仏像に特化した書籍というのは、現在普通に販売されているなかでは、ほぼこの1冊くらいしか見当たりません。

如来像のすべて、明王像のすべてなど◯◯のすべてシリーズの天部バージョン。

天の仏像にしぼってカラフルな仏像の写真がたくさん掲載されていて迫力満点!
勉強するだけでなく、写真集のごとく眺めるのもオツな風情。
やはり全巻そろえたいですね。

[関連リンク]◯◯の仏像のすべてシリーズ

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見仏記ガイドブック

ご存知、いとうせいこうさん&みうらじゅんさんの見仏記コンビ。

これまでに出た見仏記を再編集し、ガイドに仕上げた総括的な本です。

見仏記の楽しい内容を閉じ込め、より旅のガイドブックとして使いやすくなりました。
みなさんの見仏のおともにぜひ!

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仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる

天のランクに属する仏像の種類はほんとうにさまざまで最初のころは
仏像に出会ってもなかなかなんの仏像なのか判別がむずかしいところ。

こちらはポケットサイズの仏像本。
私は友人からもらったこの本と上で紹介した見仏記をもって
仏像旅をするようになったのが仏像好きになったきっかけです。

この本をポケットに入れてお堂の中に入っては
「この仏像は忍者のポーズをしてるから大日如来だ!」とか思いながら
仏像の名前を当てたり、見分け方を勉強するようにしていました。

ポケットにしのばせて、これを持っていれば、いつ仏像がやって来ても大丈夫!

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奈良 仏像めぐり (たびカル)

たびかるさんの仏像シリーズの奈良版です。
天の仏像が多い東大寺や興福寺などもバッチリカバーされています!

旅の雑誌らしく仏像を紹介するだけでなく拝観方法や拝観可能時間などもまとめられていて
女性でも親しみやすくポップでかわいい雰囲気。

たびカルさんは京都版も出ているので
この奈良の仏像編とあわせていつでも旅に出かけられるよう備えておくと
重宝すると思います!

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