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【仏像の種類:大黒天とは、ご利益や真言】ふくよかな七福神…しかし実は武闘派戦闘神!開運最強の三面大黒天!

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大黒天(だいこくてん)はふくよかで、にこやか。米俵の上に立ち、頭巾と打ち出の小槌とおおきな袋の3点セットで私たちに幸せを届けてくれるやっさしーいおじいさん。これが私たちの知る大黒さまです。でも、仏教の知識が多少ある方なら、仏教界に所属する大黒さまがそれだけじゃない、そんな単純であるわけがないことを薄々感じてるんじゃないですか? 大黒天のバックグラウンド、ちょっと気になります・・・!!

大黒天の主な働き

優しい福の神のイメージがある大黒天。でも○○天と名の付く仏像は天部というグループに属し、煩悩の象徴である邪鬼から仏教界を守るのが仕事です。もう最初からネタバレしちゃいますが、天部に属する大黒天だって戦闘神なんです。ですから、武器を持ち、怒っている大黒天像もあります。そう、大黒天だって怒るんだ! 実は、大黒天はその長い歴史の中で、いろんな要素が混じり合った、複雑な過去を持つ仏さまなんです。

 

密教の大黒天としては・・・ ヒンドゥー教をルーツとするマハーカーラという戦闘神が元になり出来た密教の神。破壊者としての偉大な黒い神。

仏教の大黒天としては・・・ 密教の大黒天が元になり、仏教の天部に属する神。飲食を豊かにする五穀豊穣の神。

神道の大黒天としては・・・ 密教の大黒天が元になり、大国主命(おおくにぬしのみこと)と神仏習合して出来た神。七福神のメンバーで台所の守護神、福の神。

ほらね。こんなに違った側面があるわけです。

比叡山出身の最強ご利益の仏、三面大黒天とは

さらに大黒天の最強版である「三面大黒天」がなかなかスゴイ。

三面大黒とは、正面に大黒天、向かって左に毘沙門天、右に弁才天の3つの顔がある大黒さま。大黒天は前述のとおり戦闘神や五穀豊穣の神としての役割があります。また、毘沙門天は最強武神、財宝の神であり、弁才天は芸術や音楽、財宝を司る神。これだけのご利益が一緒になったら最強だと思いませんか?

生きている間に得られるご利益を現世利益(げんせりやく)と言いますが、三面大黒天は現世利益を持つ神々を合体させることにより“スーパー現世開運チーム”を結成しているのです。

日本においては最澄が毘沙門天・弁才天と合体した三面大黒を比叡山延暦寺の台所の守護神として祀ったのが始まりと言われています。

一体で3倍オイシイ三面大黒。これを信仰した有名な武将は、百姓の子から出世して天下統一を成し遂げた戦国武将、豊臣秀吉です。彼は三面大黒天を念持仏(常に礼拝できるようにした小さなケータイ仏像)にして崇拝しました。秀吉の大出世は三面大黒のおかげかも?

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大黒天の見た目

 

大黒天については、その目的により像容が変わります。

本来の古式の大黒天は、3つ目で一面二臂、青黒(しょうこく)か黒色の肌で怒りの表情。腕が複数あり、武器を持つ場合もありました。

 

また、厨房神・財神として表わされる場合には、烏帽子・袴姿で右手の拳を腰に当てて、左手で大きな袋を左肩に背負うポーズ。

しかし何と言っても広く一般的に知られる像容は大黒頭巾をかぶり、宝袋(ほうたい/福袋)と打ち出の小槌を持って米俵に乗る姿です。

さらに、三面大黒天像の場合は、また毘沙門天と弁財天と融合し、それぞれ3つの顔を持っているのが特徴です。

宝袋の中身が気になりますか? 七宝(しっぽう)と呼ばれる、金、銀、瑪瑙(めのう)、真珠などのお宝が入っているそうです。

大黒天の成り立ち

大黒天のルーツは破壊神シヴァ神

大黒天のルーツは、ヒンドゥー教の破壊神シヴァの化身・破壊と戦闘を司る神マハーカーラです。戦闘色の強い忿怒の神でした。財福の神としても信仰を集め、その名前の意味は「偉大なる暗黒」。「黒」の文字が「大黒天」につながりますが、私たちが知る大黒天とマハーカーラはイメージが違いますね。どんな風に繋がってるの?

戦闘神として日本に伝来するも、神社の神様、福の神として広まる大黒天

日本には密教の伝来とともに伝わり、天部と言われる仏教の守護神達の一人として、軍神・戦闘神、富貴福禄の神とされた大黒天でした。

そのうち特に中国において財福を強調して祀られたものが、日本に伝えられました。密教を通じて伝来した大黒天は、初期には主に真言宗や天台宗で信仰されます。シヴァ神は降三世明王によって調伏され改心して仏教に取り入れられました。このあたりは降三世明王の紹介に詳しくのっていますのであわせてご覧ください。

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ルーツとされるシヴァ神のマハーカーラがそのまま取り入れられたので、初期の大黒天は、四本の手に三叉戟、宝棒、宝輪、羂索をそれぞれ持った戦う気満々の像でした。

現在日本でよく見られる大黒天は、戦いとは正反対の福の神のイメージ。米俵に乗り、大きな袋と打ち出の小槌を持ち、にっこり笑ってます。このように日本に来てから性格を大きく変えたのは、日本神話に登場する大国主神(おおくにぬしのかみ)と大黒天が同一視されたからなんです。それというのは「大黒(だいこく)」と「大国(だいこく)」の発音が同じだからという単純な理由! いわばダジャレです。

 

五穀豊穣や良縁の神として知られる大国主(おおくにぬし)は出雲大社などに祀られ、因幡の白兎などのエピソードで有名ですね。その大国主的な特徴が大黒天に加わり、すっかり戦闘神というルーツの影を潜めてしまいました。

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七福神としてもデビューするほど大人気な仏さまに!

そういうわけで、破壊と豊穣の神として信仰されていた大黒天ですが、後に豊穣の神としての面が残り、さらに食物や財福を司る神と変化してきます。そして、七福神のうちの1柱としてデビューすることになるのです。室町時代以降には微笑む表情が加えられ、江戸時代になると米俵に乗る、という現代の大黒天スタイルがほぼ完成。福袋と打ち出の小槌を持つ好々爺となりました。大きな袋には沢山のご利益が入っており、商売繁盛の神さまとして日本のお店に祀られているのをよく見かけますね。

大黒天の真言と梵字、ご利益

この文字が大黒天を表わす種字です。「マ」と読みます。

真言は「オン・マコキャラヤ・ソワカ」です。

大黒天としてのご利益はルーツに関係します。

[aside type=”normal”] 大黒天のご利益はこちら

★五穀豊穣と良縁

 大国主のご利益が大黒天にも受け継がれました。

★勝負事に強い

 戦闘神として天部に属する大黒天のルーツによります。

★出世や金運

 七福神メンバーとして、また豊臣秀吉が信仰した三面大黒天としてのご利益です。

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大黒天のご利益アイテム!

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大黒天の仏像の主な例

福岡・観世音寺宝蔵庫/大黒天立像【重文】(平安時代)

観世音寺(かんぜおんじ)は、福岡県太宰府市観世音寺にある天台宗の寺院です。造営開始は7世紀後半にさかのぼり、奈良の東大寺・栃木の下野薬師寺とともに「天下三戒壇」の1つに数えられ九州を代表する古寺です。

像高171cmという国内最大の観世音寺の大黒天は、一般的な大黒天のイメージと違って、この古式の武神のおもかげを残す、忿怒の表情がある像です。身体はスリムで、打ち出の小槌も米俵もありません。この像は現在くつを履いていますが、これは1914年の修理によるもので、それ以前はわらじを履いていたのだそうです。きびきびと動き出しそうな身軽に見える大黒さまです。

観世音寺については見仏入門で紹介しております。詳しくはこちらをご確認ください。

見仏入門!観世音寺の記事はこちら

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滋賀・比叡山延暦寺秘宝館/光定大師立像【重文】(室町時代)

滋賀県にある標高848mの比叡山全域を境内とする延暦寺(えんりゃくじ)。この広大な敷地の中にある秘宝館安置されているのが、光定大師像。頭巾を被り、狩衣(かりぎぬ)を着て左肩に袋を背負う像はふくよかで、沓を履いて立つ姿がいかにも・・・。そう、おそらく本来は大黒天なのですが、信仰上の理由から厚く大黒天に帰依していた光定(こうじょう)大師像として信仰されるようになったそうです。

光定最澄の高弟。最澄の忠実な右腕でした。まるで釈迦と弟子たちの関係のようで、最澄の生前も死後も天台宗成立に多大の貢献を果たす人物です。

服装や体つきのふくよかさなどを見ても、光定大師というよりは大黒天のイメージに近いようですが、小槌や米俵は見られず、好々爺の様子もありません。像高83.3cmで、彫口は大まかで背面にはノミ痕が残されているままの、素朴な印象の像です。

滋賀・金剛輪寺本坊明寿院/大黒天半跏像【重文】(唐時代)

 

金剛輪寺(こんごうりんじ)は、滋賀県愛知郡愛荘町にあり、西明寺、百済寺(ひゃくさいじ)とともに湖東三山の1つに数えられる天台宗の寺院です。

本堂にはふくよかな姿の現代のイメージに近い大黒天が祀られていますが、この寺には秘仏で日本最古の大黒天がもう一体祀られています。それが平安時代の初め、伝教大師最澄が唐(中国)より伝えた、古代インドの戦闘神の面影を残す像です。

この武装大黒天は金剛輪寺本坊の明寿院に伝えられたもので、当初は彩色されていたと思われます。少し荒く簡略に仕上げた、ヒノキの一材から作られた像。鎧を身にまとい、仏敵を打ち据える宝棒を左手に握っています。大黒天としては国内最古級の9世紀初めの作と言われています。

【書籍紹介】天部の仏像のことをもっと知りたくなった時には…

ここでは今回紹介した天部の仏像以外にもより深く仏像について学ぶことができる書籍・DVDをご紹介いたします。ただどれもわかりやすく書かれている初心者~中級者向けの本ですので、お気軽にお読みいただけるかと思います。

天の仏像のすべて (エイムック)

天部の仏像に特化した書籍というのは、現在普通に販売されているなかでは、ほぼこの1冊くらいしか見当たりません。

如来像のすべて、明王像のすべてなど◯◯のすべてシリーズの天部バージョン。

天の仏像にしぼってカラフルな仏像の写真がたくさん掲載されていて迫力満点!
勉強するだけでなく、写真集のごとく眺めるのもオツな風情。
やはり全巻そろえたいですね。

[関連リンク]◯◯の仏像のすべてシリーズ

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見仏記ガイドブック

ご存知、いとうせいこうさん&みうらじゅんさんの見仏記コンビ。

これまでに出た見仏記を再編集し、ガイドに仕上げた総括的な本です。

見仏記の楽しい内容を閉じ込め、より旅のガイドブックとして使いやすくなりました。
みなさんの見仏のおともにぜひ!

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仏像の見方ハンドブック-仏像の種類と役割、見分け方、時代別の特徴がわかる

天のランクに属する仏像の種類はほんとうにさまざまで最初のころは
仏像に出会ってもなかなかなんの仏像なのか判別がむずかしいところ。

こちらはポケットサイズの仏像本。
私は友人からもらったこの本と上で紹介した見仏記をもって
仏像旅をするようになったのが仏像好きになったきっかけです。

この本をポケットに入れてお堂の中に入っては
「この仏像は忍者のポーズをしてるから大日如来だ!」とか思いながら
仏像の名前を当てたり、見分け方を勉強するようにしていました。

ポケットにしのばせて、これを持っていれば、いつ仏像がやって来ても大丈夫!

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奈良 仏像めぐり (たびカル)

たびかるさんの仏像シリーズの奈良版です。
天の仏像が多い東大寺や興福寺などもバッチリカバーされています!

旅の雑誌らしく仏像を紹介するだけでなく拝観方法や拝観可能時間などもまとめられていて
女性でも親しみやすくポップでかわいい雰囲気。

たびカルさんは京都版も出ているので
この奈良の仏像編とあわせていつでも旅に出かけられるよう備えておくと
重宝すると思います!

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