【見仏入門】No.19 静岡伊豆の国市・願成就院の仏像・見どころ/国宝阿弥陀如来・不動明王・毘沙門天<運慶作>


静岡県伊豆の国市にある願成就院(がんじょうじゅいん)は、鎌倉幕府執権であった北条氏ゆかりの寺です。ここに奈良仏師を代表する運慶作といわれる仏像が5体残されています。北条氏が奈良の慶派に仏像の制作を依頼したものと考えられますが、30代の若き運慶のすばらしい仏像が並ぶさまはまさに奇跡といえるものでしょう。

 

静岡という東国に慶派の仏像が安置されるというきっかけになったものと考えられ、鎌倉幕府と奈良や京都の仏師などとの関係が推測される貴重なものと考えられます。

 

ぜひ直に現地でこれらの仏像に会ってみてください。東国の武士のたくましさなどを表現しているともいわれる運慶などの慶派の仏像との接点もきっと見えてくるでしょう。

 

 

願成就院へのアクセス

 

願成就院へは、電車で行く場合は、伊豆箱根鉄道「韮山(にらやま)駅」、または「伊豆長岡駅」から徒歩15分くらいです。タクシーやシャトルバスは「伊豆長岡駅」から出ています。またJRから直通の特急・踊り子号も伊豆長岡駅には停まります。

車なら国道136号線(下田街道)で三島・修善寺間の中間地点です。

 

寺の西側は鎌倉幕府で代々執権を務めた、北条時政をはじめとする北条氏の館跡があり、堀越御所(室町時代に鎌倉公方として下向した足利政知が関東に入れず、ここに館を構えたとされる御所)の詰城といわれる「守山城」には現在「守山自然公園」や「守山西公園」などが整備されています。

 

鎌倉幕府滅亡後の1333年に、北条氏の妻や娘たちが韮山(にらやま)に戻り、館跡に寺院(成福寺<じょうふくじ>)を建てて北条氏の冥福を祈ったとされています。

また近くには戦国時代始めに、伊豆を統治するために北条早雲(初代後北条氏)が築いたといわれる韮山(にらやま)城もありましたが、最後はこの城も秀吉の北条攻め(小田原攻め)で滅びて行きました。

 

そのため、戦場となったこの地の寺も焼かれましたが、その時何とか難を逃れたこれらの運慶の仏像は今何を語ってくれるのでしょうか?

 

願成就院の歴史

 この願成就院は鎌倉時代初頭の1189年に、この地で源氏再興の旗揚げをした源頼朝が奥州藤原氏との戦勝を祈願して、幕府初代執権北條時政公(北條政子の父)が創建した寺です。

 

 

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鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」には、時政が建立した大御堂と南塔、二代執権北條義時が亡父時政公供養として建立した南新御堂、三代執権北條泰時による北條御堂と北塔の建立など、堂塔伽藍の営作は北條氏三代にわたり続いたことが記されています。

 

1222年には、朝廷より官寺とする旨がくだされ、大きな池を配した「浄土様式」の壮大な寺院が北條氏の氏寺として造営されていたといわれています。

 

なお、同時代に建てられた浄土様式の寺としては、平泉の毛越寺、鎌倉の永福寺や京都の浄瑠璃寺などが知られています。

鎌倉時代のこれらの伽藍(建物)は、15世紀末に北条早雲による堀越御所(北條時政館跡)攻めの兵火で焼失してしまいました。しかし、このとき寺にあった運慶(5体)を始めとする仏像たちは奇跡的にも助かったのです。

数回の発掘調査でその寺の建物の遺構概略が明らかとなり、1973年に境内を中心に周辺一部地域を含めて「旧願成就院跡」として国指定史跡になっています。

境内には、北條時政足利茶々丸(堀越御所二代公方)の墓所があり、この寺が両者の菩提寺であったことがわかります。

 

願成就院の仏像の詳細

阿弥陀如来坐像 【国宝】(1186年)〈運慶作〉 像高142.0cm

 

国宝指定は本像をはじめ運慶作の5体で一括(1件)です。

 

平家滅亡から1年後の1186年に30代中頃のまだ若い運慶による東国での最初の作品です。

国宝5点は寺の大御堂に安置されています。

 

鎌倉新様式が確立したことを示す、日本の仏像彫刻史上大変意義のある仏像です。

 

この阿弥陀如来坐像と次の不動明王・矜羯羅童子・制吒迦童子の3尊立像及び毘沙門天立像の国宝5体の仏像群は、仏師運慶の優れた仏像表現が見られる貴重な作品群となっています。

胸前に両手を挙げる説法印の阿弥陀如来像で、力強く、圧倒的な重量感にあふれている体型や、深く刻み込まれた、流れるような衣文の彫法運慶の力量が十分に感じられると思います。

本尊阿弥陀如来坐像・不動明王立像・矜羯羅童子立像・制吒迦童子立像・毘沙門天立像の5体の仏像は、胎内造像銘札によって1186年の仏師運慶の造像ということが明らかになっています。

これは日本彫刻史上、運慶様式・鎌倉様式の成立を示す、極めて大きな意義を有する像であると考えられています。

 

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不動明王・矜羯羅童子(こんがらどうじ)・制吒迦童子(せいたかどうじ)三尊立像 【国宝】(1186年)〈運慶作〉

像高:不動明王137.2cm、矜羯羅童子74.4cm、制多迦童子(せいたかどうじ)83.5cm

 

 不動明王像と毘沙門天像の胎内に納められていた塔婆形銘札(めいさつ)には、「文治2年(1186)5月3日、北条時政の発願により運慶が造り始めた」という趣旨の記載があります。

 

 

30歳代の運慶の真作といえる作品は非常に少なく、中尊の不動明王像は肉付きのよい逞しい体つきが特色です。平安時代中期以降の不動明王像は、片目で天、片目で地を睨んだ天地眼で表され、口から2本突き出した牙も片方が上向き、もう片方が下向きとなるなどと表現されることが多いのですが、この不動明王像は両目とも真正面を向いて、牙は2本とも下向きとなっています。目には水晶に瞳を描いてはめ込んだ「玉眼」が使われていて目の持つ力強さが光ります。

 

この若々しい眼光鋭い形相の不動明王の両脇には、清浄無垢な愛らしい矜羯羅童子と眉間にしわを寄せて口をへの字にした少しきかん気で今にも動き出しそうな制吒迦童子の2童子を伴って悪に立ち向かう姿は、様々な苦難や災いから人々を守ろうとする強い力を感じさせます。

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毘沙門天立像【国宝】(1186年)〈運慶作〉 像高148.2cm

 

 

2匹の邪鬼を踏みつけて、玉眼入りで眼光鋭く一点を凝視して立つ勇ましい姿には、躍動感、緊張感が巧みに表現されています。

 

 

この像も運慶が前の不動明王と2童子像と同じ日付で造像をはじめたことが胎内の銘札によって明らかになっています。毘沙門天が戦の守護神として、東国武士や民衆に崇められてきたことを今に感じさせてくれます。

 

 

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阿弥陀如来坐像 【県指定】(鎌倉前期)〈慶派作(作者不詳)〉 像高86.8cm 玉眼 本堂の本尊

 

 

この像は茅葺き御堂といわれる本堂の本尊であり、通常は非公開の阿弥陀如来です。

この本堂は父時政の供養のために、1215年12月に2代執権北條義時が建立した南新御堂で、その建立した時に慶派の正統派仏師により造像された「阿弥陀三尊」の中尊であるといわれています。

 

地蔵菩薩坐像(通称:北條政子地蔵)【県指定】(鎌倉前期)〈慶派作(作者不詳)〉

像高51.6cm 玉眼入り 願成就院・宝物館蔵

 

 

像座に「寛喜の銘文」が残り、政子七回忌頃の作で、北条泰時が願成就院に奉納したと思われています。

 本像の顔は北条政子の顔となっているといわれ、政子地蔵菩薩とも呼ばれています。数多くの戦火を生き延びて一時民間の手に渡っていたものですが、後に願成就院に戻されました。
この像も慶派の仏師の造像と考えられています。

以上、願成就院の歴史や仏像のご紹介でした。
日本全国に運慶自身が彫った作品は全部で31体、その内5体がこの願成就院に安置されています。

運慶ファンならずとも訪れる価値はあります。願成就院は沼津や熱海と言った静岡の観光地にもほど近い場所にあり、修善寺などの温泉地へ行く途中にも立ち寄ることができる寺院です。お寺としては決して大きくはありませんが、運慶が残してきた仏像をすぐ近くで拝観できるお寺です。是非気軽に訪問してみましょう。

 

願成就院をもっと知りたい

 

 

願成就院の御朱印

 

 

願成就院の拝観料金、時間、宗派、電話など

正式名称

天守君山 願成就院

宗派

高野山真言宗

住所

〒410-2122 静岡県伊豆の国市寺家83-1

電話

055-949-7676

拝観時間・料金

10:00~16:00(最終受付15:30)
火曜日と水曜日(但し、正月三箇日、火・水曜日が祝日の場合は開館)、

その他休み:8月15日、7月30日~8月3日、12月26日~31日

大人500円(400)、中高生300円(150)、小学生150円(100)
※ ()は20名以上の団体料金

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