神奈川・高徳院の仏像|鎌倉の大仏(国宝 阿弥陀如来坐像)の顔・手・胎内に会う(拝観料・時間つき)

鎌倉の大仏は、日本でいちばん名前を知られた仏像のひとつです。校外学習の定番で、子どものころに見上げたという方も多いと思います。でも、この像の正式な名前を聞かれて、すぐ答えられる人は多くありません。国宝「銅造阿弥陀如来坐像」。大仏さんの正体は、阿弥陀如来です。
私はこの大仏さんを、ひとことで「苦労人」だと思っています。最初につくられた大仏さんは木造で、嵐で壊れたと伝わります。銅でつくり直したあとも、嵐や地震が大仏殿を何度も襲い、建物は失われました。それでも像は倒れず、いまも同じ場所に座っています。
場所は神奈川県鎌倉市の高徳院。江ノ電の長谷駅から歩いて約7分です。境内の中心にあるのは、屋根のない場所に座る大仏さん。外の光をそのまま受けて、顔の影も、銅の緑も、時間によって変わります。この記事では、顔、手、胎内の順に見ていきます。

高徳院・銅造阿弥陀如来坐像:目を伏せた「苦労人」の顔

正面に立ったら、まず視線の行き先を探してみてください。大仏さんの目は、閉じているのではありません。顔に対してほぼ垂直になるよう、下を向く形に刻まれています。視線が落ちる先は、参拝する人が立つあたりです。
私はこの視線を、「見下ろす」より「受け止める」向きだと見ています。屋根も壁もない場所で、こちらの高さまで目を落としている。苦労人の顔だと思うのは、そのせいです。

仏像リンク編集部MEMO 📝




公式サイトによると、顔の長さは2.35m、目の長さは1.00mです。鼻の穴は、真下から見上げないと見えないほど、額からまっすぐ鼻筋が伸びています。両頬には、創建当初に全身を覆っていたと考えられる金箔の跡が残ります。晴れた日に横から見ると、緑青の色の中に金の名残を探せます。
肩に届くほどの福耳には、耳たぶに孔が開いています。口もとの穏やかな笑みを、小泉八雲は「東洋的微笑」と評したと伝わります。
膝の上で輪をつくる手
顔の次は、手を見ます。大仏さんは膝の上で両手を組み、親指と人差し指で輪をつくっています。阿弥陀如来の手の形(印)は9種類あるとされ、この形は、そのなかで最も格式が高い「上品上生印(じょうぼんじょうしょういん)」だと、お寺は説明しています。指の間には、水かきのような膜(縵網相)まで表されています。阿弥陀如来の見分け方は、阿弥陀如来の解説にまとめています。


作者は分かっていません。公式サイトは、運慶につらなる仏師たち(慶派)の作風と、宋代の中国の仏師の影響の両方を持つ、いかにも鎌倉時代らしい像と説明しています。

名称: 銅造阿弥陀如来坐像(国宝)
時代: 鎌倉時代(銅の大仏の造り始めは1252年ごろと伝わる)
像高: 仏身高11.312m、台座を含む総高13.35m、重さ121t(公式サイトの数値。一般には約13mとも)
材質: 銅
特徴: 下を向く目。頬に残る金箔の跡。上品上生印を結ぶ手。大仏殿のない露坐の姿。胎内に入れる。
高徳院・大仏の胎内:50円で、像の内側に入る
顔と手を見たら、背中へまわります。大仏さんの内側には、入ることができます。



胎内拝観は50円で、8:00〜16:30です(入場は終了10分前まで)。内壁には格子の模様があり、公式サイトはここから、大仏さんが約40回に分けて鋳上げられたことがうかがえると説明しています。パーツのつなぎ目には、場所に応じて3種類のつなぎ方(鋳繰り)が使い分けられています。
外から見ると、布の流れる、なめらかな一つの像です。内側は、40回分の積み重ねでできている。外で顔と手を見てから入ると、あの大きな体がどうつくられたのかが、つながります。胎内では、自撮り棒の使用は控えるようお願いされています。
その他の見どころ
境内の観月堂には観音像がまつられていますが、建物の解体修理にともない、拝観休止のお知らせが出ています。再開の時期は、お出かけ前に公式サイトで確かめてください。

御朱印は、2026年は10月・11月が書置きのみの授与です。朱印帳への記帳は9:00〜15:00、印刷紙の朱印は8:00〜16:30。時期によって変わるので、これも公式サイトで確かめてから行くと安心です。

高徳院から歩いて約15分で、海に出ます。長谷駅のまわりには長谷寺もあり、半日で組み合わせられます。もう少し足をのばすなら、同じく歩いて約15分の鎌倉文学館へ。侯爵の別邸だった洋館で、夏目漱石や芥川龍之介など、鎌倉ゆかりの文学者の手紙や生原稿が展示されています。
お寺の歴史と伝承


誰が、何のためにつくったのか。実は、はっきりしたことは分かっていません。鎌倉幕府の歴史書『吾妻鏡』や古い年表の記録、これまでの研究から、いろいろな説が考えられています。
よく語られるのが、源頼朝が奈良の大仏を見て、鎌倉にもつくろうと考えた、という説です。

頼朝は計画を実行する前に亡くなり、頼朝に仕えた稲田野局(いなだのつぼね)が資金集めを始めた、と伝わります。僧の浄光(じょうこう)が協力して各地で寄付を集め、鎌倉幕府の北条泰時も援助した、とも考えられています。1238年から5年をかけて、最初の木造の大仏と大仏殿ができました。
ところが1247年、嵐でこの像と大仏殿は壊れます。1252年ごろから、銅の大仏の造り始めと伝わります。なぜ最初から銅でつくらなかったのか。嵐で壊れたから、お金が足りなかったから、木造の像は銅の像をつくるための型だったから、といった説があり、これも決着していません。

銅の大仏さんにも、災難は続きます。南北朝時代から室町時代にかけて、嵐や地震などが立て続けに襲い、大仏殿は壊れました。室町時代の末までに、屋根のない今の姿になったとされます。江戸時代には大仏殿を建て直す動きもありましたが、お金が集まらず、かないませんでした。その後、浅草の商人・野島新左衛門の寄付をきっかけに、祐天(ゆうてん)と養国(ようこく)という2人の僧が像と寺の復興を進めました。
主な歴史年表
1238年: 木造の大仏と大仏殿の造営が始まったと伝わる
1247年: 嵐で木造の大仏と大仏殿が壊れる
1252年ごろ: 銅の大仏の造り始めと伝わる
南北朝時代〜室町時代: 嵐や地震などで大仏殿が壊れる
室町時代の末まで: 大仏殿のない露坐の姿になったとされる
江戸時代: 浅草の商人の寄付をきっかけに、祐天と養国が復興を進める
なぜ、奈良と鎌倉の「大仏」は、これほど見え方が違うのか
「大仏」と呼ばれる像は、奈良にも鎌倉にもあります。でも、2つは別の尊格です。奈良の大仏さんは盧舎那仏で、全宇宙を照らす太陽にもたとえられます。鎌倉の大仏さんは阿弥陀如来です。盧舎那仏については毘盧遮那仏の解説にまとめています。
高徳院の公式サイトは、東大寺の大仏さんの寸法を並べて、鎌倉の大仏さんを説明しています。
仏身の高さは、鎌倉が11.312m、東大寺が14.98m。重さは121tと250t。螺髪(らほつ)の数は、鎌倉が656個で東大寺が492個です。





ここからは私の想像です。
顔の長さが半分以下なのに、目は同じ大きさ。それなら鎌倉の大仏さんの目は、顔の中でひときわ存在感を持って見えるはずです。その目が、下を向いている。もし大仏殿が残っていたら、この視線は堂の薄暗さの中に収まっていたかもしれません。屋根を失って、外の光の中に出たことで、顔の影も視線も、そのままこちらに届くようになった。私は、鎌倉の大仏さんが奈良より人に近く見えるのは、その苦労の結果でもあると思っています。
まとめ:屋根を失った苦労人は、いまも目を伏せている
もう一度、大仏さんの人生を思い出してください。木造の像は嵐で壊れた。銅の像は大仏殿を何度も失った。雨ざらしの時期も、復興を待つ時期もあった。屋根は、とうとう戻りませんでした。
それでも大仏さんは、いまも目を伏せて、人が立つあたりを見ています。屋根の代わりに、空の下で人と同じ光を受ける姿を手に入れた。苦労人とは、そういう像のことだと思います。


では、屋根の中に座る阿弥陀さんの目は、どこを見ているのでしょう。外の光で見た大仏さんの視線を覚えたまま、次の像の前に立ってみてください。
次に会いに行くなら
屋根の中の阿弥陀さんの目を見るなら、浄土寺。兵庫県小野市に、鎌倉時代の阿弥陀三尊立像を安置する国宝の浄土堂があります。外の光で見た大仏さんと、堂に差し込む光で見る阿弥陀さんを、並べて思い出してみてください。
大仏さんの目を、もう1つの大仏さんと比べるなら、東大寺。公式サイトが寸法を並べていた、奈良の大仏さんです。目の長さはほぼ同じで、顔の長さは倍以上違う。その差を、大仏殿の中で確かめられます。
銅の次は、木の像へ。弘明寺。横浜市南区にあり、ノミの跡を残した木造の十一面観音さんに会えます。素材が変わると、像の見え方がどう変わるかが分かります。
同じコース「関東の日帰り見仏」で、こんなところはどうでしょう
高徳院(鎌倉の大仏)の拝観料金、時間、宗派、電話など
正式名称 | 大異山高徳院清浄泉寺 |
宗派 | 浄土宗 |
住所・アクセス | 神奈川県鎌倉市長谷4丁目2番28号。江ノ電「長谷駅」から徒歩約7分。JR鎌倉駅東口から、1番乗り場の江ノ島電鉄バスまたは6番乗り場の京浜急行バスで約10分、「大仏前」下車すぐ。駐車場はありません |
電話 | 0467-22-0703 |
拝観時間・拝観方法 | 4〜9月 8:00〜17:30、10〜3月 8:00〜17:00(入場は閉門15分前まで)。予約は不要です。大仏の胎内は8:00〜16:30(入場は終了10分前まで) |
拝観料金 | 一般300円、小学生150円。中学生・高校生はお寺の案内でご確認ください。大仏の胎内は50円 |
拝観時間・料金は変わることがあります。お出かけ前にご確認ください。参考:高徳院公式サイト
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地域タグ:神奈川県の仏像

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