兵庫・鶴林寺の仏像|十一面観音立像と「あいたた観音」の聖観音立像に会う(拝観料・時間つき)

兵庫県加古川市に、「西の法隆寺」とも呼ばれる聖徳太子ゆかりの寺があります。鶴林寺です。
ここの看板は、「あいたた観音」というあだ名の観音さんです。でも私がいちばん好きなのは、その隣にいる別の観音さん。平安時代初期の十一面観音立像です。2021年ごろ、個人で訪ねました。
有名な像と、自分が好きな像が違う。鶴林寺は、そのずれを楽しめる寺です。国宝の太子堂は1112年、国宝の本堂は1397年の建立。平安時代と室町時代の建物が、同じ境内に並びます。JR加古川駅からバスで8分、歩いても25分ほどです。
鶴林寺・十一面観音立像:手の先がないから見えるもの
見てほしいのは、体の量感です。1本の木から彫り出した体は厚みがあり、胸から腰へ、衣の襞が重なりながら落ちていきます。上半身は黒く沈み、腰から下の衣は赤みのある木の色。像の肌が、色で二段に分かれて見えます。
左の前腕と右の手首から先は失われています。手がないぶん、胴の太さと腰まわりの量が、いやでも目に入ります。私が好きなのは、この「立っているだけで成り立っている」ところです。
仏像リンク編集部MEMO 📝


十一面観音は、頭の上の顔で四方を見わたす観音さんです。くわしくは十一面観音の解説へどうぞ。
名称: 木造十一面観音立像(重要文化財)
時代: 平安時代初期
像高: 170cm
材質: 一木造
特徴: 1本の木から彫り出した厚みのある体。左の前腕と右の手首から先を失う。
鶴林寺・銅造聖観音立像:「あいたた観音」
こちらが、鶴林寺でいちばん名が知られた像です。木ではなく銅で造られた、白鳳時代の観音さん。像高は83cmで、腰をわずかに左へひねって立ちます。ひねりのおかげで、銅の像なのに軽やかに見えます。
「あいたた」の名は、伝説から来ています。この像を盗んだ泥棒が壊そうとしたところ、「あいたた」と声がした。心を入れかえた泥棒は、像を返した、と伝わります。
仏像リンク編集部MEMO 📝




この像は、戦前のドイツ、戦後のアメリカで開かれた日本美術の展覧会に、日本の仏像を代表して出品されました。聖観音は、観音さんのいちばん基本の姿です。くわしくは聖観音菩薩の解説で。
名称: 銅造聖観音立像(重要文化財)、通称「あいたた観音」
時代: 白鳳時代
像高: 83cm
材質: 銅造
特徴: 腰をわずかに左へひねった軽やかな立ち姿。戦前のドイツ、戦後のアメリカの展覧会に出品された。
その他の見どころ
太子堂と釈迦三尊像・四天王像
太子堂は、1112年に建てられた国宝の堂です。堂の内陣や柱には仏画が描かれています。この堂に祀られていた釈迦三尊像(重要文化財)は、中央に釈迦如来さん、左右に文殊菩薩さんと普賢菩薩さんです。
脇侍の2体は、乗り物の獅子と象まで像の一部としてつくられています。中尊の前に、獅子と象が並ぶ構図です。
名称: 木造釈迦三尊像(重要文化財)
時代: 釈迦如来は平安時代後期風で鎌倉時代の特徴もあり、脇侍は平安時代
像高: 釈迦如来 45.5cm(脇侍は約30cm)
材質: 釈迦如来は寄木造・玉眼、脇侍は一木造
特徴: 文殊菩薩は獅子、普賢菩薩は象に乗る。
この三尊の四隅を守るのが、平安時代の一木造とされる四天王像です。足元に、岩や邪鬼のようなものが見える像もあります。
本堂の秘仏・薬師三尊
1397年建立の国宝の本堂には、平安時代の薬師如来及両脇侍像(重要文化財)が祀られています。ふだんは見られない秘仏で、60年に一度の開扉と伝わります。薬師如来さんがどんな如来さんなのかは、薬師如来の解説にまとめています。
宝物館のほかの像たち
二臂如意輪観音半跏思惟像(県指定・平安時代後期)は、片手を頬に当てて、片足を下ろして座る姿です。


僧形坐像は、伝恵便法師像と呼ばれる県指定の像です。恵便は、鶴林寺の始まりに関わる僧。この名の像が寺にあること自体が、寺の歴史を語っています。
十二神将像もあります。


行基菩薩像と聖徳太子像も、寺に伝わります。太子像は口を結び、組んだ手に何かを持つように見えます。
御朱印は、中央に「醫王殿」と書かれたものがあります。
お寺の歴史と伝承
鶴林寺の始まりは、589年に聖徳太子が僧・恵便のために建てた精舎だと伝わります。恵便は、仏教を広めようとして迫害を受け、播磨に身を寄せた僧とされます。
寺の名は、釈迦が亡くなったとき、沙羅双樹の森が一夜にして枯れ、白い花が咲いたようになり、鶴が舞い降りた、という話に由来すると伝わります。1112年には鳥羽天皇の勅願所になったとされ、この年に太子堂が建てられました。
主な歴史年表
589年: 聖徳太子が僧・恵便のために建てたのが始まりと伝わる
白鳳時代: 銅造聖観音立像がつくられる
平安時代初期: 十一面観音立像がつくられる
1112年: 太子堂が建てられる。鳥羽天皇の勅願所になったとされる
1397年: 本堂が建てられる
なぜ、有名な像と好きな像は違うのか
鶴林寺には、きれいに分かれた2体がいます。話がある像と、話がない像です。聖観音さんには「あいたた」の伝説があり、十一面観音さんには、私の知る限りそういう言い伝えがありません。
ここからは私の想像です。
人が像に話を付けるのは、像の姿に「いまにも動きそう」な気配があるときではないでしょうか。83cmの銅の観音さんは、腰をひねった軽やかな姿です。「声を出しそうだ」と思わせる動きがあります。一方、170cmの十一面観音さんは、手を失い、胴の量で立っています。声を出しそうな動きはありません。黙って立っているので、話が付く隙がない。
私は、話のない像にこそ、見る人が自分で話を足せる余白があると思っています。話を借りて会いに行く像と、黙っているから見に行く像。鶴林寺は、その両方を同じ宝物館で見せてくれます。
まとめ:声をもらった像と、声を持たない像
あいたた観音さんは、「あいたた」という声を言い伝えからもらいました。十一面観音さんは、何も言いません。手の先もありません。


声のある像から入って、声のない像の前に立つ。順番を逆にしても構いません。ただ、有名な像の前を離れたあとに、もう1体の前でどれだけ立てるか。そこに、その人の見仏が出る気がします。
では、平安時代初期の一木造の体は、ほかの寺ではどんな顔をしているのでしょうか。
次に会いに行くなら
平安初期の一木造をもう1体見るなら、屋島寺(香川)。瀬戸内海を渡って四国へ。十一面千手観音の坐像に会えます。
時代を進めて見るなら、浄土寺(兵庫・小野市)。同じ兵庫の寺で、国宝の浄土堂に阿弥陀三尊立像が安置されています。
聖観音の大きさ違いを見るなら、丈六寺(徳島)。あいたた観音さんは83cmの立像。丈六寺には、丈六の聖観音坐像がいます。
同じコース「西日本・四国・九州の古寺」で、こんなところはどうでしょう
鶴林寺の拝観料金、時間、宗派、電話など
正式名称 | 刀田山 鶴林寺(かくりんじ) |
宗派 | 天台宗 |
住所・アクセス | 〒675-0031 兵庫県加古川市加古川町北在家424 |
電話 | 079-422-2563 |
拝観時間・拝観方法 | 9:00〜16:30(閉門17:00)、年中無休 |
拝観料金 | 入山料500円(中学生以上)、宝物館500円(中学生以上)、セット券800円(加古川市民は700円) |
拝観時間・料金は変わることがあります。お出かけ前にご確認ください。参考:鶴林寺公式サイト
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地域タグ:兵庫県の仏像

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