京都・六波羅蜜寺の仏像|空也上人立像・伝運慶坐像・秘仏十一面観音に会う(拝観料・時間つき)

京都・東山、鴨川の東側。清水寺へ向かう参道のすぐ近くで、京阪「清水五条」駅から歩いて7分ほどの住宅街に、朱塗りの本堂が立っています。六波羅蜜寺です。
この寺をひとことで言うと、「人の声と姿を、忘れなかった寺」だと私は思っています。口から小さな阿弥陀さんが6体も飛び出す空也上人立像。運慶と、その長男・湛慶の姿と伝わる坐像。清盛の名を冠した坐像。仏像の寺なのに、人の像がこれだけ前に出てくる寺は、そう多くありません。


ここは、もともと「六道の辻」と呼ばれた土地です。この世とあの世のはざま、と言われてきました。平安時代の終わりには、平家の屋敷が並んで「六波羅」と呼ばれたあたりでもあります。そんな場所に、人の姿を写した像が集まっているのです。

- 六波羅蜜寺・空也上人立像:声が、仏の姿になって出てくる
- 六波羅蜜寺・伝運慶坐像と伝湛慶坐像:仏師の姿と伝わる像
- 六波羅蜜寺・本尊の十一面観音立像:12年に1度だけ開く扉
- その他の見どころ
- お寺の歴史と伝承
- なぜ、没後250年もたって、空也の像がつくられたのか
- まとめ:声と姿を、忘れなかった寺
- 次に会いに行くなら
- 六波羅蜜寺の拝観料金、時間、宗派、電話など
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六波羅蜜寺・空也上人立像:声が、仏の姿になって出てくる

わらじを履き、胸に鉦(かね)を下げ、鹿の角をつけた杖をつく。念仏を唱えながら京の町を歩いた空也(くうや)の姿です。顔を見てください。目は細く、口は半ば開いたまま。首には筋が浮いています。いま、まさに声を出している最中の顔です。

口から伸びる細い針金の先に、小さな像が6体。「南・無・阿・弥・陀・仏」の6文字が、ひと声ずつ阿弥陀さんの姿になって出てきた、という伝説を彫ったものです。声には形がありません。それを、立ててみせた。彫った人の発想に、思わず口元がゆるみます。
仏像リンク編集部MEMO 📝




空也は平安時代の中ごろ、京の町で念仏を広めたお坊さんです。当時の仏教は、貴族の文化という面が強いものでした。空也は道の辻に立ち、貴族も庶民も分けへだてなく念仏をすすめたので、「市聖(いちのひじり)」と呼ばれました。
像は鎌倉時代のもので、運慶の四男とされる康勝(こうしょう)の作です。像に「僧康勝」の銘が残っています。康勝は、東寺御影堂の弘法大師坐像(1233年)も手がけた仏師です。


念仏の声を像にした空也さん。そして、その像を彫った康勝。この寺では、まず「声」の話から入ると、あとの像が見やすくなります。
名称: 木造空也上人立像(重要文化財)
時代: 鎌倉時代
像高: 約117cm
材質: 木造
特徴: 口から針金でつながる6体の阿弥陀仏。胸の鉦、鹿の角をつけた杖、わらじ。像に「僧康勝」の銘が残る。
六波羅蜜寺・伝運慶坐像と伝湛慶坐像:仏師の姿と伝わる像

目尻にしわが寄り、数珠を持つ指が前でそろっています。老いた僧の姿で、視線はまっすぐ前を向いています。仏や菩薩ではなく、袈裟をつけた人の肖像です。運慶の姿を写したと伝わる「伝運慶坐像」です。

その隣に、運慶の長男・湛慶の姿と伝わる「伝湛慶坐像」が並びます。運慶像と比べると、顔の肉づきが若々しく見えます。親子が、年の違いまで写されて並んでいる。そう見立てて見比べるのも楽しい像です。
仏像リンク編集部MEMO 📝




この2体は、もともと寺内にあった十輪院に、地蔵菩薩坐像とともに安置されていたと考えられています。その地蔵菩薩坐像(重要文化財)は、銘こそありませんが、作風から運慶の作とされる像です。寺でも「運慶の作」と案内しています。

地蔵菩薩のくわしい見分け方は、こちらの解説にまとめています。
名称: 木造伝運慶坐像・木造伝湛慶坐像(ともに重要文化財)
時代: 鎌倉時代
像高: 伝運慶坐像は約77cm
材質: 木造
特徴: 袈裟をつけ、数珠を持つ僧形の肖像。運慶の姿を写したと伝わる像と、その長男・湛慶の姿と伝わる像。
六波羅蜜寺・本尊の十一面観音立像:12年に1度だけ開く扉
本堂の中央、厨子の中に、本尊の十一面観音立像(国宝)がいます。ふだんは扉が閉ざされた秘仏です。

御開帳は、12年に1度、辰年だけ。前回は2024年で、次は2036年の予定です。一般の参拝者は外陣からの拝観になるので、双眼鏡や単眼鏡があると頭上の小さな顔まで追いやすくなります。


頭の上に小さな顔がいくつも並ぶのが十一面観音です。見分け方は、こちらにまとめています。
名称: 木造十一面観音立像(国宝・秘仏)
時代: 平安時代
特徴: 本堂中央の厨子に安置。12年に1度、辰年だけ御開帳される。
その他の見どころ

地蔵菩薩立像(重要文化財・平安時代)は、定朝の作と伝わる像です。「髪の毛を持つお地蔵さん」として知られています。




ここから、この像は「鬘掛(かつらかけ)地蔵」とも呼ばれて信仰されてきました。

平清盛坐像(重要文化財)は、手に経巻を持って座る僧形の像です。このあたりに平家の屋敷が並んでいた縁を伝える肖像で、武将としてのイメージとは別の、経巻に目を落とす人の姿が写されています。

境内で人気なのが「開運推命おみくじ」です。生年月日と男女別に内容が分かれ、将来運や本年運などが手書きの文字で細かく書かれています。

六波羅蜜寺は、西国三十三所の第17番札所でもあります。
お寺の歴史と伝承


平安時代の中ごろ、空也が京の町で念仏を広めました。「六波羅蜜寺」の名にある「波羅蜜」は、悟りの世界へ渡るために修める6つの徳のことです。「蜜」の字は、蜂蜜の「蜜」です。

平安時代の終わりには、このあたりに平家の屋敷が並び、「六波羅」と呼ばれました。平清盛が屋敷を構えたことで、六波羅の名は都に知られていきます。寺は、そんな政権の中心地のすぐそばにありました。
主な歴史年表
平安時代中ごろ: 空也が京の町で念仏を広める
平安時代の終わり: このあたりに平家の屋敷が並び、「六波羅」と呼ばれる
鎌倉時代: 康勝が空也上人立像をつくる
1233年: 康勝が東寺御影堂の弘法大師坐像をつくる
2024年: 本尊の十一面観音立像が御開帳される(辰年)
2036年: 次の御開帳の予定
なぜ、没後250年もたって、空也の像がつくられたのか
空也上人立像がつくられたのは、空也の没後およそ250年たった鎌倉時代です。現代にあてはめると、江戸時代の人の像を、いまあらためてつくるようなものです。


ここからは私の想像です。
空也を見たことのない仏師が、顔を彫り、鉦を彫り、わらじを彫りました。そして口から6体の阿弥陀さんを出しました。つまり、空也という人物を写すだけでは足りなかったのです。空也が「何をしたか」、つまり念仏の声を、形にしたかった。
この土地は、あの世との境と呼ばれてきた六道の辻のそばです。声はすぐに消えます。けれど、消えやすい声を、像の口から伸びる針金の先に留めておく。念仏を唱える人たちが、空也のことを忘れたくなかった。私は、そう受け取っています。
そう考えると、令和館に空也、清盛、運慶、湛慶と、人の姿をした像が並んでいることも腑に落ちます。この寺は、人を忘れない場所なのだと思います。
まとめ:声と姿を、忘れなかった寺
空也の念仏は、声のままなら消えていたはずです。それが、6体の阿弥陀さんになって、いまも口から伸びています。
隣には、運慶と湛慶の姿と伝わる像が座っています。仏師の顔まで残すことを、この寺は大事にしてきました。清盛の像も、地蔵さんの髪の話も、人のことを覚えておこうとする気持ちから生まれたものに見えます。


ここで、問いがひとつ残ります。この寺の運慶像には「伝」がつきます。では、「伝」のつかない運慶は、どんな像を残したのでしょうか。
次に会いに行くなら
「伝」のつかない運慶に会うなら、静岡の願成就院。運慶が北条時政のためにつくった像が5体そろうお寺です。不動明王と毘沙門天の像の中から見つかった銘札(1186年)で、運慶の作と確かめられています。
運慶の長男・湛慶の作に会うなら、三十三間堂。本尊の千手観音坐像は湛慶の作です。六波羅蜜寺と同じ東山で、歩いてまわれます。
康勝のもう1体に会うなら、東寺。御影堂の弘法大師坐像(国宝、1233年)は康勝の作です。ふだんは非公開のため、公開日は東寺公式でご確認ください。
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六波羅蜜寺の拝観料金、時間、宗派、電話など
正式名称 | 補陀洛山 普門院 六波羅蜜寺 |
宗派 | 真言宗智山派 |
住所・アクセス | 〒605-0813 京都府京都市東山区ロクロ町81-1 |
電話 | 075-561-6980 |
拝観時間・拝観方法 | 境内:8:30開門、16:30閉門 |
拝観料金 | 令和館:大人700円、大学・高校・中学生500円、小学生400円(30名以上は50円引き) |
拝観時間・料金は変わることがあります。お出かけ前にご確認ください。参考:六波羅蜜寺公式サイト
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