足下も忘れないで!仏像の上から下までじっくりとながめてみましょう。面白い発見がきっとあります!
仏像の足元を見てみると、なんだからいろんなものに乗っていることがわかります。
ゴツゴツしたものに乗っていたり、時には動物の上にのっていたり…
この仏像が乗る土台のことを「台座(だいざ)」と言います。仏像を据え付ける台座、実はよーく観察してみると、いろんな形があることがわかります。
ぜひ仏像の足下にも目を向けて見てみましょう!
ここでは仏像の足元、「台座(だいざ)」についてご紹介していきましょう!レッツゴー!
代表的な台座って?
台座にはいろいろな基本の形があります。ここでは代表的な台座と、そこに乗っている仏様がどんなお方かをご紹介していきます。
最もベーシックな台座「蓮華座(れんげざ)」
仏像の台座で最も多いのは蓮の花の形をした「蓮華座(れんげざ)」です。仏様はあの世で蓮(はす)の花の上に生まれるという考え方から、如来や菩薩の多くがこの蓮華座に乗っています。蓮の花は仏教では特別なお花。
泥の上でも美しい花を咲かせる蓮は神聖な意味をもち仏様にぴったりです。
本来、如来グループの仏像や菩薩グループの仏像が乗る蓮華座は、他の「明王」や「天」といったグループの仏様にはあまり使いません。
でも例外があるんです!「愛染明王」という仏様は愛情や家庭円満を司る仏様。
この仏様はいつも衆生の幸福を考えて瞑想しています。
その瞑想から生まれる愛の極楽浄土が蓮華の形として著されているのです。
愛染明王は縁結びの仏様としても人気があり、怖いお顔とそのご利益とのギャップも面白いですよね。
ぜひ愛染明王のお像を見かけたら、台座もチェックしてみてください!代表例として、東京国立博物館蔵の鎌倉時代の愛染明王は要チェックです!
衣がワサワサ!「裳懸座(もかけざ)」
本来台座がある部分にも仏様の衣の裾が広がっている場合、「裳懸座(もかけざ)」と呼びます。美しいウェーブがかかった衣の様子が見どころ!
特に有名な作品として、日本最初の仏像制作者である鞍作止利(くらつくりのとり)が制作した「法隆寺釈迦三尊像」があります。
中国北魏の様式を受け継ぐこの像では、仏様の服の裾が豊かに垂れ下がり、まるで海のよう。お釈迦様の無限の力を表しているかのようです。
下の仏像は千葉・常灯寺の秘仏薬師如来坐像です。
ゴツゴツ岩は力強さの象徴!「岩座(いわざ)」
「岩座(いわざ)」はその名の通り岩をかたどったもので、十二神将などの天部や、明王の台座としてよく使われます。ゴツゴツしたところに立つ姿は力強さを感じ、不動明王や天部などの力強い存在を演出するにはぴったりの台座です!
四天王や毘沙門天像は、岩座の上で邪鬼を踏んでやっつけている像も多く、邪鬼はしばしばユーモラスな顔をしていることもあります。

モクモクの雲で空から阿弥陀様がお迎えに!「雲座」
極楽往生といえば阿弥陀如来!人が死ぬときにお迎えに来てくれるありがたい仏様は、いつでもどこでも急いでお迎えに来られるように雲のタクシー(?)に乗っています。阿弥陀如来だけでなく、二十五菩薩と呼ばれる阿弥陀如来とともにあらわれる阿弥陀如来御一行様みんなも雲でやってきます。
この台座で有名なのが兵庫県小野市の浄土寺にある、有名な鎌倉時代の仏像制作者・快慶作の「阿弥陀三尊立像」です。こちらのお像では、蓮華座に立った阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩が更に雲座の上に乗っているという豪華仕様!こちらのお寺では、晴れた日には夕方お像の真後ろに夕日が落ちて、まるで仏像全体が光を発しながら雲に乗ってこちらに向かってきているかのようなイリュージョンを体験できます。レンタカーを借りてぜひ見に行きましょう!

ここまで仏像の台座をご紹介してきましたが、自分だけの特別な乗り物の動物をもっている仏様もいます。インドの古代宗教からうけついだ伝説に彩られた、動物たちもご紹介!
仏像動物園!動物に乗ってる仏様を紹介!
古代インドの宗教から多くのものを受け継いだ仏教では、そこに古代インドにルーツをもつ動物たちも仏様の乗り物としていろいろ登場します。神秘の動物園をちょっと覗いてみましょう!
パオーン!普賢菩薩や帝釈天はゾウ
神聖な白いゾウに乗っているのは普賢菩薩や帝釈天という仏様。普賢菩薩は女人成仏を説く法華経に登場することから、特に女性の信仰を集めました。象は「悟りの実践」を意味し、白は清浄さを意味するので、普賢菩薩にぴったりの乗り物ですね。
現実のゾウは2本の牙をもつのに対し、仏教のゾウは6本も牙をもっている特別仕様のゾウも存在します。やっぱり仏様の乗り物だけあって、普通のゾウとは違うようです。

また普賢菩薩から派生した普賢延命菩薩という仏様もいます。その名前のとおり、長寿に特にご利益があるとされ、たくさんの人の信仰を集めました。その乗り物もやっぱりゾウですが、こちらは更に特別仕様!普賢菩薩の台座をぐるりと象が囲んでいます!まるで仏像ウェディングケーキ!ちなみに真言宗の普賢延命菩薩は20本の腕に4体の象、一方天台宗では2本の腕に3体の象が習わしなのだそうです。
パリのギメ美術館にある普賢菩薩像では、台座に4つのゾウが立っています。よく見るとその下にもかわいいちっちゃなゾウが並んでいるので、じっくり見ると楽しいですよ!
ガオー!文殊菩薩は獅子(しし)
文殊菩薩はライオン(獅子)に乗っています。「三人寄れば文殊の知恵」のことわざにもあるとおり、知恵を司る仏様として受験生にも大人気。筆者も大学受験前に必死にお参りをしました(おかげさまで、ご利益ありました!)。
獅子はその強さで文殊菩薩を守るとされていて、どっちかというとインドア派?の文殊菩薩の力を補ってくれているのかもしれませんね。

奈良県般若寺のご本尊の文殊菩薩像では獅子がとても大きく表されていてとっても強そう!ムキムキの獅子が見られます。
五大明王グループの一角、大威徳明王は「牛」
仏教の守護者・明王のグループに属する「大威徳明王(だいいとくみょうおう)」は、五大明王のうち西方の守護者として崇められています。この仏様は牛に乗っていますが、それは元々インドの古代宗教で水牛の姿をしていた神様が仏教に取り入れられたからだそう。

この仏様は足が6本あるのも特徴。手がたくさんある仏様はたくさんいますが、足もたくさんある仏様は他にほとんどないので、見分けるときのポイントにしてみてくださいね。
京都、東寺の五大明王のうち「大威徳明王」は迫力たっぷりの牛の姿が圧巻!JR京都駅からも近いので、ぜひ見に行ってみましょう!東寺の講堂では、梵天さまのガチョウや帝釈天さまの象など、いろんな乗り物を見ることができますよ。

孔雀明王はクジャク
元々は古代インドの「マハーマーユーリー」という女神が仏教に取り入れられ、仏教の守護者となった姿が「孔雀明王」です。元々女神だったせいか、そのお姿は優雅そのもの!乗り物もクジャクとゴージャスです。
クジャクは害虫や毒蛇を食べることから、孔雀明王は「人々の災厄や苦痛を取り除く」というご利益があるとされ、信仰されるように。
高野山霊宝館に所蔵される快慶作の「孔雀明王像」では、大きく翼を拡げたクジャクの上に蓮華座が乗り、更にその上に孔雀明王が乗っています。彩色もよく残っていてとてもゴージャスで神秘的な雰囲気。国の重要文化財にも指定されている貴重な作品です。

まとめ
ここまで仏像の台座と乗り物についてご紹介してきました。一番メジャーな蓮華座から、特定の仏様にしか使われない台座や乗り物など、仏像の足下にも実は個性豊かな世界が広がっています。これらは組み合わせて使われることも。
ぜひ仏像を鑑賞する際は、足元の台座や乗り物にも注目して観察してみてくださいね!