福島県で唯一の国宝である建物「阿弥陀堂」がある白水阿弥陀堂を紹介します。
白水阿弥陀堂は岩手県の平泉金色堂を模して建てられたといわれ、白水の意味は「泉」という漢字を上下に二つに分けたといわれています。(なるほど~!)
東北の平泉に室町時代に奥州藤原氏によりが華やかに繰り広げられた壮大な文化(藤原文化)は、平泉からここ福島県の浜通りにも広がっていたようです。園内の池や庭園はまさに平泉の藤原貴族が目指した浄土式庭園の姿そのものであり、平泉の毛越寺(もうつうじ)庭園ととてもよく似ています。
浄土式庭園というのは、平安時代に各地で広まった浄土思想に基づくもので、人々を極楽浄土に導いてくれる阿弥陀如来が住むという西方浄土の世界を現した庭園の事です。人々が理想を描いた、極楽浄土の庭園をもつ白水阿弥陀堂をちょっと覗いていきましょう~!
いわき市にある白水阿弥陀堂の紅葉ライトアップ
完璧な水鏡が最高でした。#ふぉと#PASHADELIC#ふくつぶ #東北が美しい#福島撮影隊 #ftvみんなの天気 pic.twitter.com/S99KPUBTln
— Jun (@183cm_jp) 2018年11月11日
もくじ
白水阿弥陀堂へのアクセス
白水阿弥陀堂は福島県いわきの市街地から比較的近い場所にあります。いわき駅から「川平(かわだいら)」行きバスで約20分です。福島県で唯一の国宝ということで休みの日などは観光客がたくさん訪れます。
境内も広く、駐車場もかなり広く確保されていて、案内も整備されています。
私が前に訪れた時も休みの日でしたのでかなりの観光客が来ていました。車を駐車場に停めてから周りに庭園が広がる広々とした道を入口に向かって歩いていた時に、地元の案内人(?)の方に声をかけられました。そして門に向かって左手の山を指差して、あの山はどんな山かわかりますか?と問いかけられました。「わからない」と答えると、「常磐炭田発祥の山ですよ」との返事でした。
調べると「みろく沢炭鉱」があった場所で、常磐炭田で最初に石炭発見の地として碑が立てられています。現在「みろく沢炭鉱資料館」が残されていますが、これは炭鉱で働いていた方が個人で炭鉱関係の用具や資料を収集展示しているのだそうです。
さて、入口で入場料を払って、池にかけられた朱色の太鼓橋を渡って目的の阿弥陀堂に向かいましょう。真正面に立派な阿弥陀堂があり、右手には大きな浄土庭園の池が広がります。
阿弥陀堂は背後を山に囲われ、山々の木々が鏡のような池の水面に映り、うっとりとする光景です。時間があればのんびりと池の周囲を散策して歩くことができます。
池の向こう側に回ってみると、この阿弥陀堂と入り口の朱色の太鼓橋が実に美しいハーモニーを奏でてくれています。
また堂の左側にも池と庭園は続いています。このお堂は「願成寺(がんじょうじ)」の境内に立てられているのですが、寺の本堂は左手奥の方に離れていますので、この阿弥陀堂は庭園の池の中に浮かぶ島の中に立っていて、浄土式池庭園と独特の調和を保ってとても美しく見えます。またこの池には7月~8月に古代ハス(大賀ハス)が咲き見ものです!
白水阿弥陀堂の紅葉
昨日の #白水阿弥陀堂 の紅葉があまりにも美しかったのでたくさん撮っちゃいました😂ちなみに阿弥陀堂内は撮影禁止☝周囲はほとんど紅葉ピーク終わってますがここだけ別世界でした✨ いわき駅前からバス出てます🚌 🚙だったら常磐道いわき湯本ICから15分くらいです👍年内休山日有りご確認を✋ pic.twitter.com/kvy1pyww6Y
— 椿印御朱印蔵@tubaki (@tubaki_kura) 2018年12月3日
お堂の両脇と庭の周りには、黄色の大イチョウと赤色の楓の木々が存在し、紅葉の美しいお寺としても親しまれています。お堂は、平安時代から残る東北地方の木造建築の3つのお寺のうちの1つで、静寂な雰囲気を醸し出し、周囲には情緒のある景色が広がっています。
モミジ、イチョウなどが植えられ11月初旬~下旬が見頃です。その年によって見頃は変わりますので、訪問前にHPなど調べてみましょう。
白水阿弥陀堂のライトアップ
樹齢600年の大銀杏の黄色と鮮やかな赤色のコントラストが、白水阿弥陀堂をよりいっそう美しく魅せます。ライトアップは、毎年、10月下旬~11月下旬のどこかで開催されます。開催期間は3日間程度と少ないので発表される情報をお見逃しなく。お堂の静寂さと幻想的な紅葉が見事です。
白水阿弥陀堂のお守り
白水阿弥陀堂は、1160年に岩城氏の祖則道の妻・徳姫が夫の菩提を弔うために建てた寺院「願成寺」の一角に建てた阿弥陀堂です。願を成すと寺院名も相成り、多くの参拝客で人が絶えません。恋愛成就のご利益があるとされており、若い女性を中心に人気のお守りがあります。また、ボケ防止のお守りも有名です。
白水阿弥陀堂の歴史
桓武平氏の血を引くという岩城則道(いわきのりみち)が、奥州藤原氏初代当主で平泉に金色堂を建てた「藤原清衡」の養娘であった徳姫を妻に迎え、この陸奥国南部磐城(いわき市一帯)を領地とし「岩城氏(いわきし)」を名乗ります。この則道(のりみち)の死後、妻徳姫(徳尼)は亡き夫の霊を弔うためにこの地に1160年(平安時代末期)に願成寺(がんせいじ)を建立し、その一角に阿弥陀堂を建設しました。これが白水阿弥陀堂(正式名称は願成寺阿弥陀)の始まりです。
この阿弥陀堂は福島県唯一の国宝建造物ですが、建物を含めた庭園全体も浄土式庭園「白水阿彌陀堂境域(しらみずあみだどうきょういき)」として国の史跡となっています。
この現在の浄土庭園は昭和36年、昭和47年、昭和58年の三回にわたる発掘調査で、地中から浄土庭園が姿を現したためこれを復元したものです。現地の説明版によれば、「阿弥陀堂の背後に経塚山、西に朝日滝、東に夕日滝と称されるところもあり、境域全体が極楽浄土の世界を想起されます」と書かれています。
少し全体の流れを理解するために、桓武平氏(かんむへいし)の歴史をふりかえると、889年に宇多天皇より「平(たいら)」姓を賜った桓武天皇の血を引く高望王(たかもちおう)が関東にやってきて上総(かずさ)国(千葉県東部)から常陸国(茨城県)にかけて地元豪族と手を組みながら領地を増やし、その子孫が土着していきます。これが関東平氏(桓武平氏)のはじまりです。その後高望王の長男国香(くにか)が常陸国で常陸平氏として勢力を拡大していきますが、その国香の子孫といわれるのが岩城則道(のりみち)です。
この阿弥陀堂は平安後期の代表的な建築様式とされ、屋根は美しい曲線を描き堂々とした風格を感じます。平泉中尊寺の金色堂を意識して建てたとも言われています。
また3方を山で囲まれ、そこに大きな池を設け、水辺周りをきれいな庭園で囲っています。まさに毛越寺(もうつうじ)の庭園を模した「浄土式庭園」が優美な姿を見せています。
阿弥陀堂と庭園の調和がとてもよく、昔の人々がのんびりとこんなところで歌でも詠んでいたのかなと少し優雅な気分にさせてくれます。奥州藤原氏が開いた平泉の浄土(仏教)世界がこの地にも移ってきたともいえるでしょう。
東北地方で平安時代の阿弥陀堂の建造物として現在残されているのは「平泉の金色堂」(金色堂も阿弥陀堂と言える)と、ここ「白水阿弥陀堂」の他にもう一か所、宮城県角田市の高蔵寺阿弥陀堂だけです。
高蔵寺(こうぞうじ)は819年に徳一法師により開かれたといわれる寺院で、阿弥陀堂は宮城県最古の建造物で重要文化財に指定されています。またこの阿弥陀堂は平安時代の建造物で飛騨の匠により釘が1本も使われていない構造物です。同内には丈六(2.43m)の阿弥陀如来坐像(重要文化財)が安置されていますが、周りの小仏像(13の仏像痕跡がある)は現在残されていません。
東北以外の現在残されている主な阿弥陀堂を調べてみると…
奈良
・東大寺阿弥陀堂
・法華寺阿弥陀浄土院
京都
・平等院鳳凰堂
・浄瑠璃寺本堂
・法界寺阿弥陀堂
・三千院本堂
滋賀
・延暦寺常行堂
兵庫県
・浄土寺浄土堂
九州
・富貴寺大堂(大分県)
などがあります。
現在「いわき市」という地名は少し前まで「平(たいら)市」と言っていて、江戸時代も「磐城平(いわきたいら)藩」でした。この平(たいら)という名前のいわれも諸説あり、戦国時代の16世紀頃より使われていて、「平氏(へいし)」からとか、「平泉(ひらいずみ)」からという説などがあります。
白水阿弥陀堂の仏像の詳細
国宝「白水阿弥陀堂」は、一間四面堂(正方形)で、屋根材は厚め(4.5~6mm)の椹(さわら)板で葺(ふ)いた栩葺(とちぶき)で典型的な阿弥陀堂建築です。
堂の中に入ると正面に本尊である阿弥陀如来座像が蓮華座の上に座っておられます。両脇に観世音菩薩像と勢至菩薩像が並んで立っており(阿弥陀如来三尊)、そのわきに持国天像、多聞天像の二天像が守護神としてまつられています。堂内のこれら5体の仏像はこの阿弥陀堂が建てられた頃のものとされ、いずれも国の重要文化財です。
内部では仏像の詳しい説明をしてくれますが、少し詳しく紹介しましょう。
阿弥陀如来坐像
像高84.8cm、寄木造で像の表面は漆箔(漆(うるし)を塗った上に金箔をはったもの)です。金箔は現在少し見て取れますがあまり残っていないようです。穏やかな表情で、静かに流れる浅い袖衣をつけ、光背は透かし彫りされた飛天(ひてん)が彫られており見事なものです。
また阿弥陀如来様は九重の花びらの蓮華座の上に座っています。かなり丁寧に精巧な作りは、定朝様式の代表的な像といえると思います。とても立派な像で、いつまでもゆっくりと拝んでいたい仏像です。
勢至菩薩、観世音菩薩(阿弥陀如来の脇侍)
共に像高は約100cmの寄木造の像です。本尊と同じ頃の製作と見られています。国の重要文化財登録名は阿弥陀三尊として「木造阿弥陀如来及両脇侍像」です。
持国天(寺伝 広目天像)、多聞天(寺伝 増長天王)立像も像高は脇侍の像とほぼ同じです。寄木造で、極彩色の跡が残っています。国の重要文化財登録名は「木造持国天立像(寺伝広目天像)・多聞天立像」です。
このお堂も明治には神仏分離令によりかなり廃れており、仏像は寺に移されていて風雨にさらされることは無かったようですが、堂の屋根が崩れかけた時もありました。
明治35年(1902)に特別保護建造物の指定を受け阿弥陀堂の修復や浄土庭園の造成などを行っています。また東日本大震災では建物および仏像に被害が出て1年以上修理にかかりました。
以上、白水阿弥陀堂の歴史や仏像のご紹介でした。
白水阿弥陀堂を訪れるのは、夏の時期が最もお勧めです。7月中旬~8月中旬には、古代ハスの花が一斉に咲き誇り、美しい光景が目の前に広がります。お寺の外周は、伝統的な技法を用いられた浄土式庭園で、年中通して四季折々の花々を見ることが出来ます。ぜひ福島の旅へいってみませんか?
白水阿弥陀堂の御朱印

白水阿弥陀堂の拝観料金、時間、宗派、電話など
正式名称 |
菩提山無量寿院願成寺阿弥陀堂 |
宗派 |
真言宗智山派 |
住所 |
〒973-8405 福島県いわき市内郷白水町広畑219 |
電話 |
0246-26-7008 |
拝観時間・料金 |
4月~10月 8:30~16:00 大人500円、子供(小学生)300円、未就学児無料 |
周辺の観光地・口コミ |
.
.