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おさわら【福井県あわら市 北本堂・神明神社/十一面観音立像】

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17年に一度のご開帳となった福井県あわら市 北本堂・神明神社境内にある 十一面観音像の御開帳を訪問した。

 

神社の周りにはびっしりと田園風景がひろがっていた。黄緑色に光る早稲の稲穂がたなびく。神社の北側には竹田川流れ、その南側にある神明神社には大きな のぼりが立っていて、たくさんの地元の方々で賑わっていた。

 

  地元の方々にご挨拶をした後、石段を20段ほど上り十一面観音像が御開帳されている観音堂へ入る。すでに厨子は開かれており、目の前に等身大を超えるであろうすっきりとした白い肌の十一面観音像が姿を現していた。

 壇上に安置されている十一面観音菩薩立像は 泰澄大師が自ら掘ったとされる十一面観音で、その由来を尋ねると44代元正天皇のころ、泰澄大師が白山へ登頂した時に、西の海を見ていたら、昼なのに紫色の雲がたなびいて、夜は光り輝くたくさんの仏像の影が見え、この場所は特別な場所だ!と泰澄大師が訪ねお寺の伽藍を建立して、本堂の本尊に十一面観音やその他の仏像自ら刻んで祀ったのがはじまりだという。

十一面観音は平安時代中期の11世紀前半頃の製作と考えられており、欅の材質を使用して、ほぼ全身を丸堀するなど材質的に見ても大きな特徴を備えた仏像だそうだ。本尊の十一面観音像は頭部頭頂部に仏面、天冠台の上に十面をのせる。顔はふくよかな方の張りがあり、目は彫眼。体部は条帛・天衣をつけ、左手を曲げて花瓶を持ち、右手は下に指を伸ばしたらしている。両腕から足先までを欅の一木造りから掘り出しており、内刳が全く行われていない。簡素に素地の彩色 仕上げをする。 十一面観音の光背には江戸時代のものとされる、西国三十三観音のそれぞれの観音像が びっしりと彫られ、仏像密度がとても高い状態。

 この十一面観音像は体はすらっとはしていて縦の伸びやかさはあるが、横や奥行きの動きにはやや体の硬さのようなものを私は感じた。それは逆にどことなく感じる、この仏像が霊木を意識した作ではないか、そんな雰囲気を感じさせていた。

 

 

本尊十一面観音像の両脇には広目天立像と多聞天立像共に同じ時代頃の作と考えられる欅一木造りの二天。この二天像も どっしりとした量感があり、ポージングもかなり洗練されている仏像のように感じる。

 この地で大事にされてきた十一面観音像が開帳され、多くの人々が 県内外からこの像を求めてやって来る。そして地元の人々も、わざわざ自分たちの観音さんに遠くから来てくれたのだとまた喜ぶ。

 

 現在は17軒の民家でこの十一面観音をお守りしているのだそうだ。十一面観音像のまえには「おさわら」という藁の束がまつられていた。これは子宝を祈願する祈りが込められているようで、ここの人々は身内に結婚をした人がいたら、この藁をもらいに来るという風習がこの地には今でも残るのだそう。最後には紅白の饅頭をお寺の方からいただき、両者が幸せな晴れ晴れとした気持ちで 神社を後にした。