緊急事態宣言下の東京。なかなか遠方に外出するのも憚れる中、SNSに入ってきた展覧会の開催情報。
アキバタマビ 21
第89回展「つなぐ⇄なおす」展。
都内であれば移動距離が少なくて済むと思い、スポーツに明け暮れる長男を誘い出して、秋葉原にあるアーツ千代田3331へ向かいました。
今回の展覧会は栃木県鹿沼市に工房を構える仏像修理工房「三乗堂」と映像制作会社「inahoFilm」さんのコラボレーションにて仏像修復の現場を表現する映像と作品の展覧会。
三乗堂さんが工房を構える栃木県鹿沼市は、筆者が生まれた町の隣町で、小さい頃から慣れ親しみ、そして通学していてた高校がある土地。幼少期から青春時代を過ごした場所ということでたくさんの思い出が染み付いている土地でした。
展覧会の構成は大きく2つの部屋に分かれ、1つは修理作品が展示されるスペース、もう1つは映像作品が流れる会場という構成。
壁にかかげられたひとつの台座。そこに映像が重なり、線が動いて仏の姿が浮かび上がらせます。
明王の姿が線で現れたと思いきや、また線がリセットされ今度は如来の姿に変わる。
一つの台座のうえで如来と明王という2つの顔が現れる、まさに仏の本質を映像化しているように感じる。
作品には触れることはできないものの間近で見ることができたのがよかったらしく、子供も自分の姿と同じような童子の姿をした仏像に興味津々で見ていました。
もうひとつの映像作品は三乗堂のメンバーさんたちが「仏像を修理すること」について、お寺の地蔵菩薩が修理されていく光景を交え、お話しされるインタビュー映像。
私も映像作品を見ていて「仏像を修理すること」とはどういうことなのか、ということに思いを巡らせてみた。
- 「仏像を修理すること」だけでなく「仏像を守ること」「仏像を伝えていくこと」というのは基本的には同じこと
- 仏像を大事に守っていくということは先人たちが紡いできた歴史を次の世代につなげること
- 歴史だけでなく仏像に込められた想いもつないでいくこと
- ただし現代に生きる私自身、未来の人々がその想いを汲み取る感度がないと、想いを正しくキャッチアップすることができない
三乗堂の方々の口から語られる こんなことに思いを馳せていました。
印象深かったのは三乗堂さんも、かたちあるものいつかは壊れることを理解し、朽ちていく仏像も許容されていくべき(解釈違かったらごめんなさい)とも考えていたこと。
ありのままを受け入れてでも自分たちを必要とする人たちの手助けになりたい、そんな純粋な気持ちを感じることができました。
私自身も日本の各地の仏像を訪ねて必ずしも恵まれた環境にないがために、半ば木くずと化しているような仏像も多く目にしてきました。
それらのすべてが救われてほしい気持ちはあるものの現実問題そうかんたんにはいかないことも理解しているつもり。
だから仏像に込められた想いだけでも汲み取ってその想いを次の世代につなげていけたらと感じました。
会期は7月3日まで。是非多くの方々に訪ねていただきたい展覧会でした。
