蒼氓


山間にある真言宗御室派のとある寺院を訪ねた。

 

かつては山の上に70坊がかつて立ち並んでいたそうだが焼き討ち等の災害にあい、江戸時代には22坊そしてついに大正14年の雪の日に火災が発生し、完全になくなってしまったそうだ。寺のご住職と庫裏で談笑した後、境内にある収蔵庫に案内され耐火性の鉄の重い扉を開けると収蔵庫の湿気を一定に保つために収蔵庫の内側を被っているヒノキの香りが広がった。

 

収蔵庫の外は夏のむしっとした暑い気候であるが、中はクーラーはないのに空調の保たれたひんやりとした空気が心地よい。収蔵庫の真ん中に本来33年に1度のご開帳である秘仏の十一面観音を拝し得た。

収蔵庫の中央に雄大に祀られている十一面観音は像高が2.5メートル、ヒノキの寄せ木造りで、お寺の言い伝えによると僧行基の作であると言い伝えが残るが、鎌倉時代末期から室町時代の作られた仏像であると考えられているそうだ。黒々とした胴体と大振りな衣紋表現、表情は理智的というよりも人間らしい温かみのある表情をされている。山々から人々を優しく見つめるかつての姿が想像できた。宮城県の給分浜にある十一面観音像を想像しました。

給分浜 十一面観音

御住職のお話によると十一面観音がかつていた山は現在も瓦や石垣が並んでいるそうで登山道も整備されて比較的登山に適している山なんだという。この十一面観音があったかつての場所はどういった所なのか、また十一面観音はどのように人々を見守もっていたのか、時間があればいつか登ってみたいなと思いました。