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山梨大善寺の仏像‐秘仏薬師如来の御開帳を訪ねて

大善寺アイキャッチ
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 深い歴史と伝統を刻む山梨県の勝沼に、時代の流れを静かに見つめ続ける大善寺があります。その歴史は、甲斐武田氏がこの地にその名を馳せる前から続いており、時を超えて多くの旅人や仏をもとめる人たちの心の拠り所となってきました。

甲州の風土とともに育まれたこの古刹の中には、一風変わった「果物を持った仏像」の存在が。果物といっても、いったいどんな果物なのでしょうか?その背後に隠された物語や、複数の時代背景を持つ仏像たちが、訪れる者たちにどんなメッセージを伝えているのか。

一歩、その敷地に足を踏み入れると、都会の喧騒から解放されたかのような静寂が広がり、ふと、自分自身の存在と向き合う時間が流れます。本堂内で目にするさわやかな白ぶどうは、大善寺らしい独自の世界観を感じさせ、歴史と現代が交錯する瞬間を楽しむことができます。

この記事を通じて、大善寺の深い魅力や歴史、そしてその中に息づく多くの仏像たちとの出会いを共有したいと思います。歴史や仏像に興味がある方はもちろん、日常の喧騒から離れて、心の安らぎを求める方にも、この古寺の魅力を感じていただけることでしょう。大善寺をしっていただき、その歴史の深さや魅力を再発見していただければと思います!

大善寺へのアクセス方法

大善寺へのアクセスは、公共交通機関と車の2つの方法が主となります。JR中央本線の勝沼ぶどう郷駅を利用する際は、タクシー、バス、徒歩の3つの方法から選べます。また、車を利用する方は中央道勝沼インターが便利です。訪問の際は、自身の移動手段やスケジュールに合わせて、最適なアクセス方法を選択してください。

JR中央本線を利用する方法

大善寺は山梨県甲州市勝沼町勝沼に位置しており、主要な交通手段としてJR中央本線の勝沼ぶどう郷駅が最も便利です。勝沼ぶどう郷駅からのアクセス方法は、以下の通り3つの選択肢があります。

タクシー: 駅からタクシーを利用すると、わずか5分で大善寺に到着します。仏像初心者や、初めて訪れる方には迷わず到着できる方法としてオススメです。

バス: 駅からバスを利用する場合、15分の乗車時間が必要です。一定の時刻に運行されるため、時刻表を確認しての移動が必要となります。

徒歩: 歩くことを好む方や、勝沼の街並みを堪能しながらの散策を希望する方は、徒歩でのアクセスも選択肢としてあります。徒歩では約50分かかります。

車を利用する方法

車を利用する場合、中央道の勝沼インターが最寄りとなります。インターを降りてからはわずか3分の距離に大善寺があります。駐車場も完備されているため、ドライブがてらの参拝も可能です。

大善寺の拝観方法・拝観環境・料金

拝観は9時から16時30分までとなっています。ただし、受付は16時までとなるので、訪問時には時間を確認し、余裕を持って訪れることをおすすめします。

拝観料は以下の通りです。

大人: 500円

※11名以上の団体では1人あたり400円

※20名以上の団体ではさらにお得な1人あたり300円

小中高校生: 300円

大善寺の歴史と由来

大善寺の起源と伝承

大善寺の創建は奈良時代初期の718年に行基菩薩が日川渓谷での修行の成果として始められたと伝えられています。夢の中で登場した薬師如来が持っていた薬が葡萄だったことから、これが甲州葡萄の始まりであるとの伝承があります。

三枝氏との関わり

甲斐国の古代豪族である三枝氏の氏寺として知られる大善寺は、971年に三枝氏の始祖、三枝守国が薬師堂を再建したとされます。この薬師堂は1279年に焼失し、再建されたものが現存する国宝指定の薬師堂です。三枝守国自身も日本書紀に記載される重要な人物で、京都での失態により甲斐国に左遷され、その後の甲斐国の歴史に深く関わっています。

国宝の本堂

大善寺の本堂(薬師堂)は山梨県下で最古の建築として知られ、中世密教仏堂の典型例として、さらに大仏様の影響を受けた東国建築の東限としても非常に重要です。

武田氏との関連

武田信縄の子で、武田信玄の従妹として知られる理慶尼は大善寺と深い関連があります。彼女が記した「理慶尼記」は、武田家滅亡の重要な資料として現在も大善寺に保管されています。武田勝頼は、武田氏滅亡の際、大善寺に一晩過ごし、ここから天目山へ向かい、その途中で自決しました。

伝説と歴史の狭間で

大善寺の歴史は、古代からの伝説と、中世の甲斐国の歴史、さらには武田氏の終焉といった、重要な歴史的出来事と密接に関わっています。また、甲州葡萄の伝承も大善寺に結びついており、仏教、歴史、そして地域の伝統が一つの場所で交錯しています。

大善寺の仏像の詳細

秘仏本尊・薬師如来坐像(5年に1度の御開帳)

秘仏の薬師三尊像(特別に許可を得て撮影)

 

大善寺薬師如来坐像

中心となる薬師如来像は、その高さは85.4cm。顔から体までの一木造りの特性として、均整の取れた、まとまった造形が見受けられます。特に指の長さや手の形状に目を見張ります。また、左手には平成時代になり葡萄を持つ姿として変更されています。

  • 素材と製作技法
    中尊像は、サクラの木の一本から彫られています。これは、まるで大きな木の一部分を取り出して仏像に変えたかのような技法です。頭や体の主要部分はこの一本の木から作られていますが、手の部分は後から追加された材料から作られています。よくみるとめちゃくちゃ手が長いんです。

 

  • 特徴的な表現
    この仏像の頭部は大きく、体もしっかりとしています。髪の部分には肉髻は「切付螺髪」そしてその下は「植付螺髪」という別々の木片を彫り、頭に取り付けたものです。植え付け式になる前は、螺髪はうんと細かく彫り込まれ、頭に直接彫り込まれていました。また、服の一部が左肩や右足の上にかかっているのも、古い時代の仏像の特徴です。

 

  • 制作時期と特色
    この薬師如来の顔は穏やかで、ほっぺたが丸く、表情が優しく見えます。このような特徴から、この仏像はおそらく九世紀末から十世紀前半に作られたものだと考えられます。地方の仏師、つまり地元の職人によって作られた可能性が高いです。

 

  • 金箔
    この三尊像についている金箔は、もともとのものではなく後からつけられたものと考えられます。

肉感的で力強い体つきと、その中で穏やかな表情が印象的で、安定感のあるしもぶくれの頬も特筆すべき点です。

個人的には胸まわりの量感が見事だと思いました。非常にどっしりと重量感が見事な造形で見てて惚れ惚れします。

日光菩薩像・月光菩薩像(5年に1度の御開帳)

日光菩薩・月光菩薩は向かい合うように祀られる(特別に許可を得て撮影)

 

秘仏薬師如来像とともに同じ厨子の中に祀られている脇侍としての日光菩薩像(高さ103cm)と月光菩薩像(高さ103.3cm)を従えています。均整のとれた体つきで魅力を放っています。特に腰のくびれや下半身の強調は、女性らしい優美さを感じさせます。その顔立ちは小ぶりで、眉や目、口のバランスが取れた、優しげな表情が特徴です。

  • 日光菩薩像
    日光菩薩像も、本尊の薬師如来同様にサクラの木の一本から彫られています。この像は特に、頭や背中の部分に「内刳(うちぐり)」という彫りが入っているのが特徴です。内刳とは、木彫りの技法の一つで、木材の内部をくりぬいて空洞にすることを指します 。内部をくりぬくことで、木材の乾燥・収縮によるひび割れを防ぐことができます 。また、内刳りを行うことで像に空洞ができ、軽くなる効果もあります。内刳は、木彫りの技法の中でも特に木彫仏の造像技法によく用いられます。左腕は少し割れている部分があり、手や足の先端は別の材料で作られています。

 

  • 月光菩薩像
    月光菩薩像は、日光菩薩像とほぼ同じ方法で作られていますが、「内刳(うちぐり)」という空洞入っていません。この像の手や足の先端も、後から変えられた部分が多いです。

薬師三尊像は三尊ともに平安前期の特徴を持ち合わせています。衣文の線の彫りも緻密で、後補部分が少ない中尊像は、まとまりのある造形美です。脇侍の二像も、それぞれの持つ魅力と共に、平安前期の特色をしっかりと伝えてくれます。

まとめ

大善寺薬師三尊像は、平安初期の仏像として多くの特徴を持っています。サクラの木を使用し、さまざまな技法で制作されている点が注目されます。初心者の方でも、これらのポイントを知ることで仏像の美しさや歴史的背景を深く理解できるヒントになるでしょう。

十二神将立像

大善寺には薬師如来を守護する役割を持つ十二神将像があり、その立像は鎌倉時代の1227~1228年に奈良慶派の大仏師、蓮慶によって制作されました。像高は145.9~138.2cmと、見る者を圧倒する存在感があります。

十二神将像の概要

十二神将像は、慶派仏師の技術の結晶として、それぞれが異なるポーズや表情で造られています。一部、画一的な印象も受けますが、鎧のディテールや、怒りの表情、逆立つ髪など、その造形技術の高さは一見の価値あります。特に午神将は、他の像とは一線を画す痩身での造形や、個性的な顔立ちが注目されています。

造形の特徴

十二神将像は、皮革の甲冑を身にまとい、勇ましい武将の姿で立っています。各像は異なる武器を手にし、独特の表情を持っており、その細かな差異には作者の高い技術と独自の世界観が感じられます。

色彩の変遷と発見

最近の調査で、江戸時代の彩色を除去したところ、武田信玄の時代に補われたとされる赤を基調とする鮮やかな彩色が明らかになりました。この発見により、時代の変遷とともにその姿を変えてきた十二神将像の歴史がより深く理解できるようになりました。

蓮慶について

蓮慶は奈良を中心に活動していた慶派の仏師とされ、その名前は「大仏師南京三川公蓮慶」として、寅の神将像内に刻まれて発見されました。蓮慶は奈良の慶派の仏師で、山梨県の福光園寺にも彼の作とされる吉祥天像や両脇侍像があります。

福光園寺のタイトル
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日光菩薩立像、月光菩薩立像

大善寺に安置されている日光、月光菩薩像は、像高約250センチという迫力ある大きさを持っています。天井にまでそびえるような姿で十二神将像のお姉さん的な存在に見えました。この像は、ヒノキの木を利用した寄木造りで、細部にまで気を配った玉眼が施されています。

日光菩薩立像、月光菩薩立像のおもな特徴

日光、月光菩薩像は装飾性が非常に強く顔の形は卵型で、髪や衣の襞(ひだ)の造形が非常に繊細です。特に日光菩薩の額の上の髪の編み方は、独特であり、おしゃれな印象です。下半身には、2段に大きく折り返された裙や腰布が付けられており、全体のバランスがとっても良いです。腰のくびれや、強く刻まれた襞の線が、女性的な菩薩像の個性やアクセントとなり魅力を一層引き立てています。

製作の背景

日光、月光菩薩像は、1270年に大善寺の本堂が焼失した際、焼失した「新仏丈六(丈六薬師)」の脇侍であったと考えられています。この背景から、本尊の薬師如来坐像とは異なる、独立した日光、月光菩薩が別に祀られている理由が解明されます。丈六の大きさを誇る薬師如来さんもいらっしゃったんだなぁ。会いたかった。

その他

山門には金剛力士像や県指定文化財に山岳信仰の祖である役行者像 (鎌倉時代)があります。

大善寺の奇祭「藤切り祭」

大善寺には毎年5月8日に行われる「藤切り祭」が伝わります。この祭りは、1,300年以上の歴史を誇る伝統的な祭りです。このお祭りは、大善寺の御神木から高さ6.3メートルもの藤の根を切り落とすという壮大な行事が中心となっています。

勇壮な藤の争奪

この藤の根は、約6尺(約1.8メートル)の大蛇の形をしており、その姿が圧巻。祭りのクライマックスとして、若者たちがこの大蛇の形をした藤の根を奪い合います。また、大蛇や御神木は藤蔓で作られ、祭りの中で行者堂で供養される天狗祭も同時に開催されます。

無形民俗文化財に指定

山梨県の奇祭として知られています。そのため、山梨県指定の無形民俗文化財としても評価されており、さらに国の選択無形文化財にも指定されています。

大善寺を訪問しての感想

2023年10月大善寺薬師如来像の御開帳にあわせ、大善寺への訪問の機会が得られました。

特別な御開帳に合わせての訪問ということで、とても楽しみにしていたこの日。訪れた時間が夕刻に近かったこともあり、日曜日にも関わらず、静かな境内でゆっくりと拝観することができました。

中央に祀られる手に葡萄を持った薬師如来像。この薬師如来は平安前期のもので、久しぶりにお会いしたのですが、その一木造り特有の存在感に圧倒されました。葡萄を手にするその姿は、甲州葡萄の起源とも繋がる伝説を彷彿とさせ、そこには大善寺の長い歴史とその起源が感じられます。

本堂内には、鎌倉時代の十二神将像や日光菩薩、月光菩薩など、さまざまな時代の仏像が安置されており、そのバラエティに富んだ仏像の数々はそれぞれの像から、異なる時代の彫刻技術や、当時の人々の信仰心が伝わるようです。

本堂の入り口には白ぶどうが飾られていました。その見た目のさわやかさは甲府盆地を吹き抜ける風のようで、清々しい大善寺の印象を感じさせ山梨県に来たよ喜びを感じさせてくれました。

実際に、あの伝説の葡萄が現在まで受け継がれているのを目の当たりにすると、歴史の重みを感じずにはいられませんでした。

大善寺の深い歴史や、時代を超えて伝えられる仏像たちの美しさに触れることができました。読者の皆様にも、四季折々の風情を感じながら、この大善寺の歴史と仏像に触れていただきたいと心から願っています。

大善寺の御朱印

 

大善寺の拝観料金、時間、宗派、電話など

正式名称

柏尾山 大善寺

宗派

真言宗智山派

住所

山梨県甲州市勝沼町勝沼3559

電話

0553-44-0027

拝観時間・料金

9:00~16:30

大人1名あたり500円
小・中・高校生1名あたり300円

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