茨城県守谷市、大木。利根川と鬼怒川が悠然と合流するその地に近い高台に、釋迦山大円寺は静かに佇んでいる。栃木で生まれ育った私にとって、鬼怒川は故郷の象徴とも言える川だ。かつてこの近くにある蕎麦の名店「鬼怒川竹やぶ」に通い詰めた日々があったが、その目と鼻の先に、これほどまでに芳醇な平安の面影を遺す仏がいたとは、当時は露ほども知らなかった。幾度かの相談を経て、ようやく許された訪問。川のせせらぎが聞こえてきそうな静寂の中で、その出会いは訪れた。

釋迦山大円寺 木造釈迦如来坐像:ふっくらと愛らしい童顔に癒やされる

本堂の扉が開かれた瞬間、視界に飛び込んできたのは、予想を上回る圧倒的な「頭部」の存在感だった。木造釈迦如来坐像。まず目を引くのは、そのぷっくりとした頬と、幼子を思わせるやさしげな童顔である。

頭部のボリュームに対して奥行きを抑えた体躯は、平安時代末期から鎌倉時代初期へと至る、地方に伝播した定朝様の到達点の一つを示している。かつては全身に金が施されていたというが、今は欅材の落ち着いた質感が、この仏の歩んできた長い時間を静かに物語っているようだ。その温和な表情は、訪れる者の心を解きほぐす不思議な力に満ちている。

仏像リンク編集部MEMO 📝

仏像リンク編集部
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守谷の地に残る、平安の香り漂う貴公子のようなお釈迦さんです。その秘密を一緒に紐解いていきましょう!

大円寺のご本尊は、実はかつて「薬師如来」であった可能性が高いという興味深い背景を持っています。左足を上にして組む結跏趺坐のスタイルや、欠失している左手の形状が、奈良時代以来の薬師如来の形式と一致するためです。元禄2年(1689年)に江戸・浅草の大仏師、寂幻(じゃくげん)によって修理された際、釈迦如来として整えられたと考えられています。歴史の荒波の中で姿を変えながらも、地域の人々に大切に守り継がれてきた。東日本大震災で台座が損壊した際も、本尊が奇跡的に無事だったというエピソードには、この仏様の強い守護の力を感じずにはいられません。

仏像カルテ<木造釈迦如来坐像>

名称: 釈迦如来坐像(茨城県指定有形文化財)

時代: 平安時代末期(12世紀)

像高: 146cm

材質: 欅(けやき)材

特徴: 一木造り、割矧造。定朝様の影響を強く受けた地方作風。やや大きめの頭部と童形の表情、細かな螺髪、浅い衣文が特徴。元禄2年に大仏師・寂幻により修理。

お寺の歴史と伝承

仏像リンク編集部
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飛鳥時代まで遡るという古刹の物語。地元の信仰が息づく歴史の舞台をご案内します。

大円寺の歴史は極めて古く、伝承によれば推古天皇の御代(593~628年)、悦翁(えつおう)という人物によって開山されたと伝えられています。天正年間以前の古い記録も残されており、古くからこの地域の信仰の中心地であったことが伺えます。境内にそびえ立つ樹齢500年を超えるムクノキは、市指定の天然記念物。鐘楼を抱くように広がるその枝ぶりは、この寺が歩んできた悠久の時を象徴するかのようです。また、江戸時代には旗本の一色家の墓所が設けられるなど、時の権力者からも篤い信頼を寄せられていたことが分かります。

主な歴史年表

・593~628年:推古天皇年間、悦翁により開山と伝わる。

・12世紀(平安末期):本尊「木造釈迦如来坐像」が造立される。

・鎌倉初期:鐘楼横の方形石塔が制作されたと伝わる。

・天正年間(1573-1592)以前:寺院に関する古記録が存在。

・1689年(元禄2年):江戸の大仏師・寂幻により本尊の修理が行われる。

・2011年:東日本大震災により本尊の台座が半壊するも、後に修復。

・2014年:本尊が茨城県指定有形文化財に指定される。

拝観を終え、庫裏で御朱印を待つ間、住職と少し言葉を交わした。栃木の川の話から、土浦にある常福寺の薬師如来との様式的共通点について。住職は控えめに笑っていらしたが、後で看板を確認すると、確かに常福寺の像との関連が記されていた。自分の勘が当たったことへの小さな高揚感と、住職の朗らかなお人柄、そして番犬のワンちゃん。それらすべてが、この「根釈迦様」との出会いを、より一層鮮明な記憶として私の中に刻み込んでくれた。高台の寺を去る時、吹き抜ける風が心地よかった。

大円寺の拝観料金、時間、宗派、電話など

正式名称

釋迦山 大円寺(だいえんじ)

宗派

曹洞宗

住所・アクセス

〒302-0106 茨城県守谷市大木676

駐車場:有り

電話

0297-44-4664

拝観時間・拝観方法

通常は外拝。本尊拝観希望の場合は事前確認が望ましい。

拝観料金

志納

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