千葉に新しい博物館ができ、しかも注目すべき薬師如来を中心とした仏像展が開催されるということで今回は市原歴史博物館「いちはらのお薬師様」の特別展に行ってきました!
千葉って、仏像の宝庫なんですよね。なんといっても2013年に千葉市美術館で開催された「仏像半島」の展示が内容が非常に濃く、それまでも何度か千葉の仏像に訪問する機会があったものの、その“千葉の仏像”の多種多様っぷりに驚いた記憶がありました。
とくに今回の舞台となる市原あたりから房総半島先端にかけては仏像のパラダイス!仏像リンクでもオフ会の開催など、何度も訪れてる地域ですが、毎回新しい発見があってワクワクさせてもらっています。
今回の特別展は「流行り病と民衆の祈り」とサブタイトルがつけられています。コロナを乗り越えてきた現代の日本ならではの展覧会とも言えます。さらに市原の仏像の魅力、とっても素敵なので、この展示を通じて市原の文化や歴史の深さを知っていきたいと思います。では、いってみましょう!
市原歴史博物館の拝観環境・料金
拝観環境

市原歴史博物館は2022年に開館されたばかりということもあり清潔感かつ静かで落ち着いた展示空間でした。洗練された空間で仏像を近くでじっくりと鑑賞することができます。仏像についてはガラスケースもなく直接対峙できるということもあり、仏像たちが歩んできた歴史の深さや、その背後にある物語を想像しながら、間近で心ゆくまで堪能できる拝観環境でした。
料金
大人は特別展と常設展示を合わせて800円、高校生は500円で楽しめます。さらに、20人以上の団体なら、もっとお得に。中学生以下のキッズや、障害者手帳を持つ方とその介護者は無料で入れます。
大人(個人): 特別展は800円、常設展示は300円。
大人(団体): 特別展は600円、常設展示は200円。※団体は20人以上。
高校生(個人): 特別展は500円、常設展示は200円。
高校生(団体): 特別展は300円、常設展示は100円。※団体は20人以上。
中学生以下: 無料。
身体障害者手帳等を持つ方と介護者: 観覧料免除。
市原歴史博物館の歴史・コンセプト

もともとこの歴史博物館があった場所は埋蔵文化財調査センターがあり、それを増築・改修し令和4年秋にオープンしたばかりのピカピカの施設でした。
市原は豊かな歴史と文化の宝庫なんですよ。そして博物館の誕生により、それらの貴重な文化財を展示することができるようになりました。ここは「歴史をつなぐ、人をつなぐ」っていうコンセプトを持っていて、市原の約3万年にわたる歴史を、まるで時間旅行に出かけるように楽しめちゃいます。市原歴史博物館では、これらの遺産をストーリー形式で整理し、展示や体験学習を通じてその価値を分かりやすく伝えています。
デザインもすごいんですよ。外観は「いちはらの大地」を表現していて、まるで地層を切り取ったようなユニークなデザイン。緑豊かな自然との調和もバッチリです。

おまけに、千葉大学との連携で、3D技術を駆使した「触れる展示」やオリジナルグッズの開発など、最先端の取り組みも盛りだくさん。文化的な貴重な資料と新しい技術が組み合わされ、この地域における最先端の資料の保存や展示の中心地とも言えます。
ワークショップも頻繁に開催されているようで地域の人々と一緒に文化をつなぐ架け橋のような場所に、これからなっていくだろうなと感じさせられました。

特別展「いちはらのお薬師様」の開催概要

市原歴史博物館では、市制施行60周年を記念して、2023年10月1日から12月24日まで、特別展「いちはらのお薬師さまー流行り病と民衆の祈りー」を開催されています。
この展示は、新型コロナウイルスの終息を願うテーマを掲げ、流行り病と民衆の祈りに焦点を当てています。 展示の目玉は、県内最古の白鳳仏である栄町龍角寺の「銅造薬師如来坐像」(国指定重要文化財)です。
この他にも展示には、合計43体の仏像がずらり。平安時代後期からの木造薬師如来坐像や日光・月光菩薩、十二神将像など、一堂に会する姿は圧巻です。これらの仏像を通して、昔の人々が病気にどう対処していたか、どんな祈りを捧げていたかを知ることができます。
これらの仏像は、流行病に対する先人たちの知恵や風習、そして救いを求める民衆の祈りを象徴しており、展示を通じてその歴史的背景を深く理解することができます。
この特別展は、これまで公開されていなかった市原市の貴重な歴史遺産を広く紹介し、流行り病に立ち向かってきた先人たちの対処方法や祈りの様子を詳細に展開しています。
またワークショップも展開され様々な体験を通じて、来場者にわかりやすく伝える工夫がされており、仏像や歴史に興味を持つ方々にとっては貴重な機会となるでしょう。新型コロナウイルスの終息を願い、穏やかな日常が戻ることを祈る展示内容は、現代の私たちにも深く響くものがあります。
特別展「いちはらのお薬師様」の展示仏像について
これから展覧会で展示されている仏像の一部をご紹介いたします。
その前に薬師如来って?って方はぜひこちらの記事もご覧のうえお読みください!
千葉・金乗院(稱禮寺管理)/薬師三尊像<県指定重要文化財>

「いちはらのお薬師様」展の中の、ポスターに選ばれたまさに今回の展示の顔となっている仏像がこちらの金乗院の薬師三尊です。中尊の薬師如来像は、約55センチの坐像で、その威厳ある顔立ちに思わず見とれちゃいました。鼻筋が通って仏よりも人間的な顔をしている印象です。その大きな肉髻(にくけい)と広い額、そして小さなあごがとっても特徴的。なんだか、ニット帽を被っているようでおしゃれなようにも感じます。遠い昔の人々の信仰心やファッションセンスが伝わってくるようで、なんだかほっこり。
そして、脇侍の日光・月光菩薩像たちは、約70センチの立像。スラッとした体つきが美しくて、流れるような衣文の彫りが素敵。特にその長い脚は、まるでモデルのようなプロポーションです!
面白いのは、これらの薬師さんたち、もともとはカラフルに彩色され形も違っていたんだって。1988年の修理以前、薬師如来は阿弥陀如来の手の形をしていましたが、修理され薬師如来の姿になりました。また江戸期には既に薬師如来として信仰されていたことが分かったようです。今は何も着色のないシンプルな素地の状態だけど、その昔の姿を想像するとどんな姿だったのでしょうか。薬師如来像の穏やかな表情。まるで、私たちを見守ってくれているような、優しさに満ちたその顔。そして、日光・月光菩薩像の優美な姿。彫刻の細部に宿る繊細な美しさに、圧倒されました。
千葉・薬王寺/薬師三尊像<市指定重要文化財>

こちらは市原市・薬王寺の薬師三尊像です。高さが71cmというサイズ感、寄木造りで作られていて、施無畏印を結ぶ右手と、薬壺を持つ左手というシンプルなスタイルです。
個人的に印象に残ったのはその表情!微笑みを浮かべた穏やかな顔立ちが、まるで「大丈夫、私が守ってあげるよ」と言っているよう。
身体は少し太めで、卵型の頭がとってもチャーミング。膝の部分の衣紋が、パイ生地のような柔らかさを感じさせて、ふわっとした気分になれます。像高はそこまである訳では無いんですが全体的にボリュームを感じることができて、平安時代の一木信仰に通じるものを感じます。
昭和48年に修復されたというこの仏像、いつもは秘仏でなかなかお目にかかれないんです。年に一度4月8日の一般公開の日には、ぜひお寺でお目にかかりたいと思っております。
千葉・橘禅寺/薬師三尊像<県指定重要文化財>

こちらは橘禅寺(きつぜんじ)の薬師三尊像です。中尊の薬師如来像は、80センチの坐像で、そのいかつい顔つきにちょっとビックリ!普段見慣れている優しい仏像とは全然違うんです。ちょっと怖いけど、心配してくれるお父さんのような顔。でもね、じっくり見ていると、その強いまなざしや引き締まった口元に、不思議と引き込まれるんですよ。
厚めの唇に、大きな鼻。やや目が釣り上がっていて、口元も少し上がっているんです。なんだか、力強さと同時に穏やかな優しさも感じられて、不思議な魅力がありました。
そして、耳たぶが大きく輪になっていて、ちょっとチュロスを連想させるような形。それに加えて、大きな螺髪のぶつぶつとした感じが、まるで小さなチョコレートボールのよう。仏たる「人間とは異なる存在」をより強調しているように感じました。
特に興味深かったのが、上半身と下半身の衣文の表現の違い。上半身は自然に流れるような襞(ひだ)で、下半身はしっかりと足を包み込んでいて、その対比がなんとも言えない美しさを醸し出しています。身体全体のスマートさが鎌倉時代の仏像らしさを感じさせてくれます。
そして、両脇侍の日光菩薩・月光菩薩像たちも素晴らしいんです!約1メートルの立像で、端正な顔立ちに高いまげ、如来と同じ袈裟をつけているんです。なんだか、王様に仕える高貴な大臣を見ているような気分にさせられました。通常、菩薩像って、上半身裸で、なんとなくモデルのファッションショーで歩いているような華やかな装いをしているイメージがありますよね。でも、この脇侍像、なんと如来と同じ袈裟を着ているんです!三尊揃って同じ格好っていうのはちょっとフォーマルな感じで、まるで重要な式典に出席するVIPのよう。

さらに、この脇侍たちの体型についても注目です。なで肩で、頭が少し前に傾いているんですよ。これって、宋の仏教美術の影響を受けているらしいんです。
日本の仏像彫刻におけるこの宋風の流行がいつから始まったのか、考える上で、この脇侍像はめちゃくちゃ重要なんです。
千葉・橘禅寺/二天立像<県指定重要文化財>

先程の薬師三尊像と同じ橘禅寺(きつぜんじ)の二天像です。この二天立像、高さが約1メートルとちょっと。ぱっと見、なんだか強面で忿怒(ふんぬ)の表情をしているんですが、よく見るとなんだかダンスしているみたいで、ちょっぴりユーモラスなんですよね。頭のまげの形ももっこりしててちょっとかわいい。
しかも、この像、一木造りで、右手を上げた力強いポーズがすごく印象的。その太い腰や筋肉質な感じ、古いけどとっても迫力があって、武将っぽさを感じます。

このお寺、奈良時代に行基によって建てられたという話があるんですけど、実はその詳細はちょっと謎なんですよ。でもね、本尊の像内には「平安初期の延暦年間に創建された」と書かれているんです。
橘禅寺は古くからあるお寺で、1261年には大きな火災に遭ってしまったんですが、その後再建されたんですよ。お寺の周りには石の鳥居があり、小さな神社があるんです。ここでは日本武尊の東征伝説に出てくる弟橘姫を祀っていて、お寺の名前「橘」も、もしかしたらこの神社と関係があるのかもしれません。
千葉・龍角寺/銅像薬師如来坐像<国指定重要文化財>

こちらは市原市外からの展示で栄町にある龍角寺の薬師如来坐像です。約90センチの高さで、観るからに重厚感があります。顔は穏やかな微笑みを浮かべていて、切れ長の目や小ぶりな鼻、やわらかな口元が、何とも言えぬ優しさを醸し出しています。
この仏像、なんと首から下が江戸時代のもので、頭部だけが白鳳~奈良時代の古代の仏像なんです。白鳳時代の金銅仏といえば、奈良の薬師寺の諸仏や奈良興福寺の山田寺の仏頭、東京の深大寺・釈迦如来倚像などすべて国宝の仏像ですが、龍角寺の薬師如来はそれに匹敵する白鳳時代の逸品です。
龍角寺自体もユニークな歴史を持っていて、709年に竜女が現れたことから始まるとか。もともとは龍閣寺だったんですが、龍の伝説にちなんで龍角寺に名前が変わったんですって。周辺には古墳がいっぱいあるんですが、ここに仏教が根付いたのも、きっと豪族の影響が大きかったんでしょうね。
しかも龍角寺、仏教学の学習センターのようだった時期もあったそう。中世の学問の場としても活躍していたんですね。江戸時代には火災に遭いながらも再建されたという、まさに再生の歴史があります。

昔から龍角寺の本尊として祀られていましたが昭和7年(1932)にこれがただならぬ仏像であることが再発見され日の目を一気に浴びた仏像です。
左から:深大寺|釈迦如来倚像、興福寺|山田寺仏頭、龍角寺|薬師如来深大寺の釈迦如来などと比べるとややリアルさが強調されていて、それらの2体に比べるとやや時代が経ってからの仏像ではないかと学芸員さんがおっしゃっていました。
3Dプリンター技術作の展覧会グッズも注目!
千葉大学との連携で、3D技術を駆使した「触れる展示」やオリジナルグッズの開発もありその技術を活用して作られた、この展覧会で出典された仏像の薬壺の小物入れやアクリルキーホルダーがグッズ販売されていました。

「いちはらのお薬師様」の感想
市原歴史博物館で開催された特別展「いちはらのお薬師様」は、上総地方の仏像の独自性とその時代背景に深く触れることができました。学芸員さんから聞いた話では、奈良や京都といった都の流行に影響を受けつつも、上総地方独自の仏像を造る強い意志があったのではないかとのこと。
特に印象的だったのは、古代の人々が体験していたパンデミックと、我々が直面したコロナウイルスの流行との類似点です。昔の人々にとって、熱や病は死と直結しており、その脅威は現代の我々以上に深刻でした。このような状況の中で、薬師如来は庶民にとって非常に重要な存在だったのだと感じられます。彼らの信仰心や祈りが、仏像を通して伝わってくるようでした。
また、この博物館では最新技術も取り入れられていました。特に3Dプリンターを用いた仏像の保存や再現技術は、伝統的な仏像の価値を未来に継承するための重要な取り組みです。このような最先端の技術が採用されている点も、市原歴史博物館が新しい博物館であることを感じさせます。
特別展を通じて、仏像が持つ歴史的な背景や文化的な価値を改めて認識し、古代の人々の生活や信仰に思いを馳せることができました。市原の仏像たちは、過去と現代を繋ぐ貴重な橋渡し役として、我々に多くのことを教えてくれていました。会期中、ぜひ多くの方に足を運んでいただきたいと思っております!

市原歴史博物館の場所・アクセス方法

市原歴史博物館へのアクセス方法について、公共交通機関と車を使用した場合の両方を詳細に説明します。
公共交通機関を使用する場合
市原歴史博物館へは、JR内房線の五井駅または八幡宿駅からバスでアクセスできます。
五井駅からのアクセス
平日:小湊バス「市原歴史博物館・中央武道館」行きに乗車し、約20分で「市原歴史博物館」バス停下車、そこから徒歩2分。
土日祝日:無料シャトルバスが五井駅東口と市原歴史博物館間で運行されます。
八幡宿駅からのアクセス
平日:小湊バス「山倉こどもの国」行きに乗車し、約15分で「山田橋東」バス停下車、そこから徒歩10分。
車を使用する場合
市原歴史博物館の住所は千葉県市原市能満1489、カーナビでは「市原市埋蔵文化財調査センター」で検索できます。
東京・千葉方面から
国道16号から市原埠頭入口を左折し、国道297号に入ります。山木三叉路を右折し、市原中学校入口交差点を過ぎ、二つ目の信号(ガソリンスタンドを目印に)を左折し、二つ目の交差点を左折します。その後、右手にオレンジ色の建物(市原歴史博物館)が見えます。
市原インターチェンジから
市原ICを降り、大多喜・勝浦方面へ進み、国道297号に入ります。市原橋脇交差点を右折し、市役所通りを進み、市原市役所前交差点を左折し、国分寺通りを進みます。国道297号に突き当たったら右折し、その後同じルートで市原歴史博物館へ。
袖ヶ浦・木更津方面から
国道16号から市役所入口交差点を右折し、市役所通りを進み、市原市役所前交差点を左折し、国分寺通りを進みます。国道297号に突き当たったら右折し、その後同じルートで市原歴史博物館へ。
いちはらのお薬師様展 開催情報
会場 | 市原歴史博物館(千葉県市原市能満1489) |
会期 | 2023年10月1日(日)~12月24日(日)まで 休館日:月曜日(月曜が祝日の場合は翌日) |
開館時間 | 午前9時から午後5時まで(最終入館は午後4時30分まで) |
特別展観覧料 | 一般個人800円 高校生個人500円 中学生以下無料 |
ホームページ |
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地域タグ:千葉県の仏像
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