名鉄名電赤坂駅から北へ歩く。赤坂の町を抜け、関川神社を過ぎて170メートル。西へ入ると、長福寺の境内への参道が見えてくる。数十段の階段を上がると、観音堂が現れた。今日は3月末、最高気温20度。薄曇りの空の下、山桜が咲き誇っている。本堂の手前には藪椿の木が2本、両脇に立つ。

階段の上に観音堂。堂内には提灯がいくつも下がり、地元の檀家の方々が集まっていた。12年に一度、午年の3月末のみ開帳される聖観音立像が、今日は厨子の扉を開いている。

聖観世音菩薩の提灯
聖観世音菩薩の提灯

長福寺・木造聖観音立像:一木造りの静謐な立ち姿

聖観音菩薩さん
聖観音菩薩さん

厨子の前には蝋燭が2本、灯されている。扉が開かれ、その奥に観音菩薩が立っていた。台座がやや傾いていて、像は厨子にもたれかかるように立つ。だがその姿勢が、かえって親しみを感じさせる。

顔を見上げる。やや虚ろな表情だ。視線は堂の外へ、遠くを見ている。耳には髪の毛がかかっている。写真で見ていたときより、ずっと柔らかい顔をしていた。左手には花を持っている。まるでマイクのようだ。

天衣が両腕の肘から左右に垂れている。それぞれにリボンを結ぶ。流れるような衣と、体全体のプロポーションのバランスが絶妙だ。一木造りの、紛れもない傑作だと思う。彩色はほとんど剥げ落ちているが、彫りの深さが際立っている。

観音堂の額には「熊野観音」と書かれている。厨子には葵の御紋が施されている。

仏像リンク編集部MEMO 📝

仏像リンク編集部
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12世紀前半の一木造りの傑作が、12年に一度だけその姿を見せます。
聖観音菩薩さん
聖観音菩薩さん

長福寺の木造聖観音立像は、11世紀後半から12世紀前半頃に制作されたと推定される、ヒノキの一木造りの仏像です。高さは191.2センチメートルあり、県指定有形文化財に指定されています。

左足をやや浮かせて立つ姿勢が特徴的で、もとどりが垂れ下がる髪の様子や、耳たぶが細いひも形であることも印象的です。顔立ちは神秘的な妖艶さも持っており、表情の朧げさと衣紋の豊かさの中にキリリとした強さも秘めています。

朱塗りの供物台と精進料理
朱塗りの供物台

像の左右に垂れ下がる綬帯や宝冠から下の金具飾り、持ち物、光背、台座などは、後から補われたものです。彩色はほとんど剥げ落ちていますが、原形はよく保存されており、彫りの技術の高さを今に伝えています。

普段は厨子が閉められており、12年に一度、午年の3月末に数日間のみ開帳されます。観音堂には地元の檀家の方々が集まり、提灯が灯される中、静かに手を合わせる姿が見られます。

仏像カルテ<聖観音立像>

名称: 木造聖観音立像(県指定有形文化財)

時代: 11世紀後半〜12世紀前半

像高: 191.2cm

材質: ヒノキの一木造り、彫眼、彩色

特徴: 左足をやや浮かせて立つ姿勢。もとどりが垂れ下がる髪、耳たぶが細いひも形。顔立ちは写実的で、豊かさの中にキリリとした強さも秘める。像の左右に垂れ下がる綬帯や宝冠から下の金具飾り、持ち物、光背、台座は後補。彩色はほとんど剥げ落ちているが、原形はよく保存されている。

本堂外観と五色幕
本堂外観と五色幕

お寺の歴史と伝承

仏像リンク編集部
仏像リンク編集部
長福寺の歴史は、平安時代の長者と娘の悲しい物語から始まります。寺の移転と改称を経て、今に続く信仰の場となりました。

長福寺の創建には、悲しい伝説が残されています。寺伝によれば、長保年中(999~1004年)に赤坂の長者であった宮道弥太次郎長富が、娘の力寿(りきじゅ)の菩提を弔うために、赤坂会下山に長富寺を建立したのが始まりとされています。一部の記述では、本多豊後守忠次の子であり宮道弥太次郎の妻の菩提を弔うために建立されたとする内容もあります。

承久(1219~1222年)の頃、寺は火災で焼失しました。その後、永仁4(1296)年に玄徳によって再び衰え、無住の寺となったといいます。大永2(1522)年、大運寺(現在の御津町広石の大恩寺)の暁誉上人が、弟子の善誉上人に命じて寺を現在地に移し、その際に寺名を長福寺に改めました。

寺の裏山には、力寿の墓と伝えられる「上臈石」「女郎石」とも呼ばれる自然石が、石塔の一部とともに建っています。木造聖観音立像は、宮道弥太次郎長富が寄進したものとする記述が残されています。

観音堂の額には「熊野観音」と書かれており、熊野信仰との関わりも興味深いところです。

また、境内には推定樹齢300年のヤマザクラがあり、幹周りは2.8メートル、樹高は7メートルに達します。昭和55(1980)年に豊川市指定天然記念物に指定されました。ヤマザクラは本州の関東以西に分布していますが、変異が多いため花の色や葉の形はさまざまです。春になると境内を彩り、訪れる人々を迎えます。

境内の桜が美しく咲く風景
境内の桜が美しく咲く風景

主な歴史年表

長保年中(999~1004年): 赤坂の長者・宮道弥太次郎長富が、娘の力寿の菩提を弔うために、赤坂会下山に長富寺を建立

11世紀後半〜12世紀前半頃: 木造聖観音立像が制作される

承久の頃(1219~1222年): 寺が火災で焼失

永仁4(1296)年: 玄徳によって再び衰え無住の寺になる

大永2(1522)年: 大運寺の暁誉上人が、弟子の善誉上人に命じて現在地に寺を移し、寺名を長福寺に改める

昭和32(1957)年: 木造聖観音立像が愛知県指定文化財に指定

昭和55(1980)年: 長福寺のヤマザクラが豊川市指定天然記念物に指定

階段を下りて、もう一度振り返る。山桜が風に揺れていた。境内はもう静かだ。次の開帳は12年後。また春の日に、この場所へ戻ってこようと思った。

聖観音菩薩さん
聖観音菩薩

長福寺の拝観料金、時間、宗派、電話など

正式名称

長福寺(ちょうふくじ)【旧寺名:長富寺(ちょうふじ)】

宗派

浄土宗

住所・アクセス

〒441-0202 愛知県豊川市赤坂町西裏99

関川神社を出て東海道を北西に170m進み西に入る。名鉄「名電赤坂駅」から北へ。

電話

0533-87-2812

拝観時間・拝観方法

12年に一度、午年の3月末に数日間のみ開帳されます。

拝観料金

不明

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